石を「ペット」として育てる人がいる? 韓国でゆるく流行している「伴侶石」を体験してみて思うこと
◆伴侶としての石
韓国では犬や猫などのペットを「伴侶動物(バンリョドンムル/반려동물)」という。人生、生活を共にする家族の一員、まさに「伴侶」と捉えているからだ。 調べてみると、韓国でも2、3年ほど前から特定の石のことを「伴侶石(バンリョトル)」と呼び、かわいがる人たちが現れ始めたようだ。よくよく調べてみても”ブーム“とは決して言えないが、スローペースで「伴侶石」が認知されつつあるのは確かなようで、あえていうなら“ゆるく流行っている”、といったところか。 心を癒やす一つの手段として「伴侶石」が誕生したのは、競争社会の激しい韓国では必然だったのかもしれない。そしたまた、何かを大切にしたい、でも動物、植物は望んでいない人たちにとって、それはちょうどよい存在だったといえる。
◆石をペットとして愛でた例は過去にも
そこで思い出したのが、アメリカのゲイリー・ダールなる人物だ。1975年に石をペットとして愛玩するための玩具、「ペット・ロック」を販売したビジネスパーソンだ。 筆者は数年前、“発想の転換”を話題に扱った関連動画で初めてこの人物を知ったのだが、とてつもないビジネスの成功例だ……と感嘆したことを覚えている。顧客に安らぎを与えつつ、ほぼ原価ゼロでビジネスとしても成功しているわけだから……。 彼が販売したペット・ロックは、携帯可能なケース、石を置くためのわら、訓練の仕方や入浴方法などのマニュアルのほか、血統書までセットになっていたというから、まさに伴侶石の先駆けだ。 そもそも石になんらかのパワーが宿っていると考える人は多い。大切に扱い心を通わせることで、神秘的な効果が得られるような気にさせられるのも分かる。石を神格化して崇める行為は世界中で見られるものだし、盆石とか水石という形で芸術的に愛でられてもきた。 韓国の寺や山に行くと、小石が山積みになって出来た石の搭がたくさん並んでいるのを見かける。石を積み上げながら祈ることで願いがかなうといわれており、多くの人が願掛けのためにこれを行う。 こうして考えてみると、石を手元に置いておきたいと思う人々がいることは、なんら不思議ではない。しかもペットとしての石は50年近くも前にすでに大流行したことがあるのだから、石を育てるという概念自体新しいものではないわけだ。