京都駅「改良事業」で混雑緩和 しかし、原案では解決できない問題とは?
不十分な京都市の対策
そんなこともあってか、このほど、京都駅改良事業が発表された。 これは国がまとめた「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」に、京都市の要望に応じて ・鉄道駅改良への支援 ・交通結節点の整備等によるまちづくりへの支援 が盛り込まれていることを背景に、京都駅構内および南北自由通路の改善のための京都駅新橋上駅舎・自由通路を整備が決定したものである。一歩前進だが、コンコースの改良しか行われないものであり、前述の櫛形ホームによる混雑集中と人列による渋滞にはまったくプラスにはならなさそうだ。 乗り換え客をさばくことも大事だが、そもそも乗り換え客を減らす、そのために駅構造を変えて京都終着の路線同士の直通化とそれによる乗り場のコンコース付近への集約化も考えるべきではないだろうか。 乗り換えの機会を減らせば人の滞留も減り、観光名所間の移動時間の短縮でひとりあたりの訪問施設数も増やせるし、消費機会や消費額も増える。そしてこの点を踏まえて直通化と乗り場の集約化にうってつけの路線がある。嵯峨野線と奈良線の組み合わせだ。
京都市の新たな南北軸
特筆すべきなのは嵯峨野線と奈良線の立地と相性のよさだ。 嵯峨野線は嵐山の竹林や各寺社、太秦映画村、二条などの観光地があり、奈良線にも東福寺や伏見稲荷、宇治などの観光地を通るという点で共通しているので、直通すれば寄り道的な相互の行き来の増加が期待できる。地下鉄烏丸線と合わせ京都市の新たな南北軸としての機能を果たすだろう。近鉄京都線にはない 「奈良から二条・嵐山へ乗り換えなし」 も実現する。奈良や宇治などの観光訪問ともセットにできる。 また、相性の良さの点でいえば輸送体系が似ている点が挙げられる。嵯峨野線は4~6両編成(コロナ禍の多客期は最大8両)で、日中1時間あたり快速1本、普通4本の運転だ。これに対し奈良線も4両または6両編成で、日中1時間あたり快速2本、普通4本と、輸送力の違いがほとんどない上、ダイヤパターンもほぼ同じだ。 直通化で利用が増えるとなれば、嵯峨野線の快速も奈良線に合わせて毎時2本にしたっていい。どうしても増発コストが気になるなら、快速を馬堀にも止めた上で亀岡~嵯峨嵐山間約10kmの普通列車を毎時3本から2本に削減したらいい。そうすると保津峡に止まる列車は30分おきになるだろうが、ほとんど人がいないのだから十分だろう。