「(監督が)納得いかないことは分かっていた」欧州1年目の毎熊晟矢はなぜ不振を脱却できたのか。アヤックス撃破後に語った“今の自分”になるまで【現地発】
「大事な局面だった。この勝ちは大きい」
AZは12月8日、アヤックスとのノールト・ホーラント州ダービーを2-1で制した。右SBとして先発した毎熊晟矢は90分間プレー。後半アディショルタイム5分間の逃げ切りをデンソ・カシウスに託し、ベンチで戦況を見守った毎熊は、AZの勝利を告げるタイムアップの笛が鳴ると、味方と抱き合って喜びを爆発させた。 【画像】“世界一美しいフットボーラー”に認定されたクロアチア女子代表FW、マルコビッチの悩殺ショットを一挙お届け! 「サポーターの熱気を感じながら、ホームゲームらしい戦いができたと思います。2点を先行した後、ちょっと嫌な時間帯(81分)に失点してしまった。今まで、失点した後すぐに入れられていたのに対し、今日は耐えることが出来ました。そのことをプラスに捉えていいと思います」 AZが優勢に試合を進めるなか、前半は「試合に全然絡めなかった」と振り返る。その理由をこうだ。 「アヤックスの10番の選手(チュバ・アクポン)が、AZの右のCB(ウーター・フース)に対して、僕へのパスコースを完全に切るように守備をしていました。そのため、前半の僕は全くボールに触れることが出来なかったんです。だけど、前半のAZは左サイドからどんどんボールを運べていたので、そんなに変えなくてもいいかなと思ってプレーしていました」 後半に入ると毎熊は完璧なクロスを味方に蹴り込むなど、効果的な攻撃参加を増やしていった。 「自分も(試合に)参加したいという気持ちがあった。後半はポジショニングを変えながらうまく絡めたと思います」 一時の不調から脱したAZは、これでリーグ戦3連勝。今季のオランダリーグは早くもPSVの優勝で堅いと見られており、2位争いに注目が集まる。現在2位のユトレヒトとの差は勝点9もあるものの、6位のAZもここから来季のCL出場権争いに参戦したいところ。 「ここから上の順位に向かって行くか、下を見ながら試合をしていくか、大事な局面だった。この勝ちは大きいと思います」
「ちょっと悩む時期もありました」
チーム同様、毎熊自身も不振から脱したよう。今季、菅原由勢の後継者としてセレッソ大阪からAZに移籍した彼は、開幕から攻守にダイナミックなプレーで活躍してきたが、11節のフェイエノールト戦、12節のヴィレムⅡ戦は出場機会が無く、13節のスパルタ戦は25分間の出場に留まった。 しかし、11月28日のヨーロッパリーグ、ガラタサライ戦で活躍した背番号16は、その3日後に行なわれた14節、ヘラクレス戦でリーグ戦でのスタメン復帰を果たす。そして全国紙「デ・テレフラーフ」の週間ベストイレブンに選出され、完全復帰をアピールした。今回のアヤックス戦では、前半はチームの流れを重視してポジションを保ち、後半は自身の長所を発揮するプレーを披露した。 師走に入り、オランダリーグは折り返しまであと2試合。欧州1シーズン目を過ごす毎熊は、「ちょっと悩む時期もありました。試合の出場時間が減る時期もありましたが、そこでマイナスにならずに、もう一度自分を見つめ直せたのが今に繋がっています。今はもっとチームに貢献していかないといけないと思っています」と、これまでの5か月を振り返った。 「悩む時期」とはリーグ戦で3試合、先発出来なかった時のこと。 「(マールテン・マルテンス監督が)自分のパフォーマンスに納得がいかないことは分かっていた。だから『代えられてもおかしくない』と思っていました。そのことにマイナスになるのではなく、もう一回自分を見つめ直して練習からやっていった。そこが良かったのかな」 不振に喘いだ時期だけでなく、周囲から活躍を称えられていた時期も「自分はもっともっとやらないといけない」と思いながらオランダで過ごしていたという27歳は、アヤックスを下した直後も「もっとやらないといけないと思っています」と力を込めて語った。 取材・文●中田 徹