田舎へ移住して給料ももらえる…「地域おこし協力隊」7人に聞いた現場のリアル やりがいあるが、課題は定住 起業や政治家への転身も
すっきりとした山椒(サンショウ)の香りが部屋いっぱいに広がる。「この布は薄いから内側に使うのが良さそうやねえ」。山に囲まれた高知県越知町の民家で、楽しそうに会話しながら、山椒の種で枕を制作している女性たちがいた。 「一番幸せでいられる場所に住む」コロナ機に増えた移住 理想の一軒家、のびのびとした子育て環境…実際の生活はどうなの?
中心は、清水香さん(52)。「地域おこし協力隊」の隊員として、埼玉県から移住した。任期終了後も越知町に定住するという。 都会から過疎地へ移住する地域おこし協力隊は、地域活性化を担う総務省の制度だ。開始から16年目。現在、全国で7千人以上の隊員が活動している。 隊員は、どんな人たちで、何をしているのだろうか。町に溶け込む隊員、任期後も住み続ける元隊員、政治家に転身した人…。7人が話した現場のリアルとは。(共同通信=野島奈古) ▽田舎に憧れ脱サラ 山椒の香りは、リラックスや血行を促進する効果があるという。清水香さんは、「お母さん」と呼ぶ3人の地元女性と「のうがえい枕」を作る。「のうがえい」は土佐弁で「具合が良い」を意味する。 清水さんは、高知県主催の移住相談会で越知町を知った。田舎暮らしへの憧れもあり、脱サラして埼玉県から2021年に着任。祭りの準備や草刈り、何でも手伝い、町民に溶け込んできた。
▽任期後も残りたい 地元で有名なラーメンを土産品にしようと商品化に挑んだこともあったが、コストや再現の難しさから断念。「のうがえい枕」のアイデアは「お母さん」たちに教えてもらった。 高知県は山椒の生産量が全国2位。越知町の農業法人が、年間60トンの種を廃棄していることを知った。「無料の物から価値を生み出したい」と、製品化した。 枕は、ふるさと納税の返礼品にもなった。役場の担当者は「住民と一緒に地域の物を使い活動してくれ、助かる」と歓迎している。 清水さんは、4月の任期終了後も定住すると決めている。「新しいことをするのは楽しい。山々の風景にも癒やされる」。枕や山椒肉まんの販売のほか、飲食店でのアルバイトなどで生計を立てる計画だ。 「お母さんたちに出会っていなければ、町に残っていなかったかも。不安は大きいが、まずはやってみる」 ▽自治体の裁量 地域おこし協力隊は、1~3年の任期で、農林水産業や観光振興に従事する。活動内容や待遇は自治体の裁量で決まり、会計年度任用職員として採用される場合と、個人事業主として委託関係を結ぶ大きく二つの採用形態がある。募集情報は、自治体ホームページや一般社団法人「移住・交流推進機構(JOIN)」に掲載されている。