虎のソナタ 球児監督!この〝エラー〟あり?なし? 消えた結婚指輪めぐりドタバタ年末年始
午後4時に始まる紙面会議。編集総括席に座っていた整理部長の矢田雅邦がおもむろに言った。 「まず、私から釈明があります」 何事か…。正月早々、縁起でもない。誰もが不安な気持ちに駆られた。 「え~、大みそかのことなんですが…私のことで、大騒動に発展させてしまいました」 昨年12月31日。この日と同じく、総括は矢田が、チーフデスクを川端亮平が務めていた。 昼過ぎに出勤し、ノートパソコンを開く。しばらくすると、矢田の顔が真っ青になった。 「ない!」 川端はポカーン。 「ない! ない! ないないないない!!」 矢田が叫び続けた。左手薬指につけていた指輪がなくなっていた。 矢田は、すっくと立ち上がった。会社を飛び出し、交番に向かった。2時間帰ってこなかった。 タイミングが悪いことに、編集局長の生頼秀基が会社にやってきた。年末年始休みじゃないの?と思ったが、生頼は仕事納めだった日、年の瀬に働く社員をねぎらうために「31日、ちょっと会社行くわ」と言っていた。 総括席はもぬけの殻。生頼は「矢田はどこに行ったんや!」となった。 川端が困った表情でかくかくしかじか説明する。局長は苦笑いするしかない。一般スポーツデスクの長友孝輔まで「ちょっと探してきます!」と探検隊に参加した。長友は矢田の出社ルートをあぶり出し、近隣のホテルの植え込みまでチェック。「なかった…」と肩を落として戻ってきた。 紅白歌合戦も上の空。自宅に戻った矢田は、すべてを打ち明けた。肩をすくめて、カミナリに打たれる体勢をとった。 妻の裕子さんは、しばし沈黙。「指輪が身代わりになってくれたのかもしれないね」と言ってくれた。矢田に何かの不幸が待っていたところ、指輪が助けてくれたのでは、と-。なんという優しさ。矢田は心の中で号泣していた。 神様、仏様、指輪サマ-。矢田は年が明けてから、宝塚の川面神社、清澄寺、中山寺…と次々足を運び、手を合わせまくった。たった5円玉で。 あきらめかけていた1月3日。奇跡が起きた。