強制引退直前の“奇跡” ガールズケイリン史上最高144万円車券を演出「競輪の神様は見ていてくれた」/猪子真実さんインタビュー後編
ガールズケイリン史上最高配当を演出
期末での代謝がほぼ決まっていた2024年5月の青森。最終日に1着を取り、2021年12月以来となる通算21勝目を挙げた。3連単の配当は144万5400円。全210通り中、208番人気の組み合わせで、これはガールズケイリン史上最高配当記録となった。 「ミッドナイトで(不利な)7番車。前の方から始めようと進めた。自分の前にいたダンプ(加藤恵)が踏んでくれて、前方がもつれました。自分は内にいたから脚はたまっていたんです。先頭を走っていたのは(浜地)晴帆で『外帯線を外せ!』と思って見ていたら一瞬外した。あれは見切りで突っ込んだのではなく、外した確信を持って内を踏みました。最後はハンドル投げ。勝ったかどうかはまったく分からなかった。ゴール後は審議のアナウンスがあったからドキドキしていました」 レースを終えて検車場に戻ると、仲間たちが迎えてくれた。 「ふーちゃん(奥井迪)が涙ぐんで出迎えてくれたんです。同級生の三ツ石(康洋)君にも『いいもの見せてもらった』と言ってもらえたし、うれしかった。最後まで練習を休まずやっていたから、突っ込んで1着を取れたのかな。競輪の神様は見ていてくれたんだなと」 開催が終わり、預けていた携帯電話を受け取るとたくさんの連絡が届いていたという。思わぬところで自らの走りがいろんな人に届いていたことを知ることになった。最後までもがき続けた証は、記録にも記憶にも残った。 「携帯の電源を入れたら通知がすごかった。優勝したことはなかったけど、こんなに喜んでくれる人がいるんだと思いました。次の開催に行ったらあまり話をすることのなかった後輩のガールズ選手からも『猪子さん、青森の1着見ました。感動しました』と声をかけてもらえた。コロナ禍以降は生活習慣も変わって後輩との絡みも減っていたのでうれしかった。最後の最後で見せ場を作れてよかったです」 ラストランは6月の豊橋。大勢のファン、選手仲間、関係者に見送られ無事ゴールを駆け抜けて、12年の選手生活に幕を閉じた。