日本株のスイートスポット近づく? 半導体市況を先読み
米中貿易戦争が世界経済の不透明感を増幅する中、幾つかの経済指標は日本株のスイートスポット(上昇期)が近づきつつあることを示唆しています。筆者が注目するのは現在の世界経済を下押ししている(広義の)半導体セクターです。世界の企業景況感(PMI)と世界半導体売上高は密接に連動していますから、この元凶である半導体市況が改善すれば、景気見通しは明るくなると考えることができます。(第一生命経済研究所主任エコノミスト・藤代宏一)
2年おきに増減、次の反転期は今年末
半導体市況を先読みするには、出荷と在庫のバランスに注目することが重要です。半導体は新製品のサイクルが早く、需要の変動も大きいことから、メーカーは適切な在庫管理に苦労する傾向があります。IT技術の発展によって企業はリアルタイムで在庫管理ができるようになったと言われて久しいものの、売上を予想するのは相変わらず難しいいようです。 そのため、在庫は概ね2年おきに増加・減少(往復4年)を繰り返しています。ひとたび過剰在庫が発生してしまえば、当然のことながら生産を抑制する必要性が生じるため、そのこと自体が景気を減速させます。これを「シリコンサイクル」といい、現在は2017年末をピークとする下降局面に位置していると考えられます。過去の経験則にもとづけば、下降開始から2年が経過する2019年末頃にこのサイクルが反転することになるのですが、今回もそうしたサイクルを描くのでしょうか。
最悪期を脱しつつある2つの指標
それを見定めるにあたっては、在庫調整の完了時期を予測することが重要となります。そこで(世界の半導体市況を映し出す)日本の鉱工業生産統計で「電子部品・デバイス工業」の出荷と在庫をみると、好転の兆候が確認できます。出荷と在庫の前年比伸び率の差をとった出荷・在庫バランスは2018年末頃に底打ちし、現在も改善を続けています。在庫は2018年後半に40%近く増加した後、直近6月の値は▲9.6%と遂に減少に転じました。依然として出荷が伸び悩んでいるため、生産が増加に転じるまでには時間がかかりそうですが、過剰な在庫がはけつつあることは確かです。 またこうした半導体市況の好転を先取りするように半導体製造装置の輸出(特に米国向け)が底打ちしつつあることも好材料です。直近7月の数値は前年比10%超の減少でしたが、それまでの数ヶ月より下落ペースは和らいでいます。これら2つの指標は、目下の世界経済減速を主導している半導体不況が最悪期を脱しつつあることを物語っているようです。