公道では「上澄み」に過ぎない BMW M2 長期テスト(最終) 8速ATの素晴らしい仕事ぶり
積算1万3315km 公道での体験は上澄みに過ぎない
英国でも、インフレや物価高騰の話題に尽きない昨今。BMW M2とも関係が深い事象に思える。現在のBMW Mモデルでは最小サイズながら、先代のF87型から遥かに大きく、高額になっているからだ。 【写真】公道では「上澄み」に過ぎない BMW M2 2から8まで 現行のMモデルたち (206枚) それでも、M2の印象は最後まで素晴らしかった。むしろ、乗るほど良くなっていった。 第一印象は、信じられないほど有能でもM2らしくないほどシリアスだな、というもの。小さく身軽なスポーツクーペ、という感じは薄かった。実際、最高出力は460psもあり、先代の4シリーズとボディの寸法は大きく違わない。 だが、現代の高性能モデルの水準で考えれば、G87型は充分に小柄といえる側にある。サイズへ慣れるほど、M2を心の底から味わえるようになっていった。直列6気筒ツインターボの壮大なパワーは、病みつきになる。毎回、運転するのを楽しみにしていた。 確かに公道で発揮できるのは、殆どの状況で秘めたパフォーマンスの上澄みに過ぎない。460psを完全に引き出すのにも、ドリフトモードで悪ふざけするのも、サーキットへ向かわなければ難しい。また、スポーツプラス・モードの乗り心地は、英国では硬すぎる。 それを知っていても、M2は日常的な環境で面白い。路面とのダイレクトさと、レスポンシブでシンフォニックなエンジンに酔いしれられる。ダブルスポーク・アルミホイールのガリキズには、常に意識する必要があるとはいえ。
素晴らしい仕事を披露する8速AT
長期テストのM2は、近年では希少なMTではなかった。試乗レポートで絶賛されていたことは知っていたから、あえてATを選ぶべきか大いに迷った。 しかし数か月を一緒にした今、この判断が間違いだったとは考えていない。もう一度選択権が与えられたら、再びATを指定するように思う。とにかく、この8速ATは素晴らしい仕事を披露してくれるのだ。 変速は極めて迅速に行われ、タイミングもドンピシャ。ローンチコントロール機能が備わり、有能なトラクション・コントロールと協調し、本来の動力性能を簡単に引き出せる。しかも、渋滞の多いロンドンでも快適だ。 毎日のファミリーカーとして選ぶには、相当の決断が必要ではある。リアシートは実用に耐える広さはあるが、2ドアだから乗降性は良くない。しかし荷室は広く、想像以上の荷物を載せられる。パワートレインの低速でのマナーも、驚くほど上品といえる。 コンフォート・モードなら、乗り心地は充分快適。高速道路でも揺れは完全には収まらず、長距離ドライブに最適とはいい難いが、凹凸による強い入力はなだめてくれる。Mモデルらしくスポーティなインテリアは、高級感があり居心地も良い。 インフォテインメント・システムも優秀。14.9インチのタッチモニターは大きいが、スリムなデザインで圧迫感は小さめ。ロータリーコントローラーが備わり、走行中でもナビゲーションの調整は難しくない。今後も残して欲しい、インターフェイスだと思う。