球界初の京大出身投手、ロッテ・田中の現在地
「消息不明ですものね?」 あなたの現在地を知りたいーと、取材の意図を伝えると、千葉ロッテの田中英祐(24)は、意外にも明るく関西人らしい自虐的ジョークで返した。 浦和球場。埼玉のロッテ工場の近くにある2軍の本拠地である。彼は、今、その2軍のマウンド上にさえいず、ジャージ姿でネット裏ブースでスピードガン係を手伝っていた。 「まだ試合には投げる段階にはありません。キャンプは立ち投げから始まって、今はやっとブルペンにも入り、BP(打撃投手)も一度投げたけれど、うまく(感覚が)合わなかった。この時期にまだBPをやっているのは、やばいって言えばやばいんですが(笑)」 ――あなたの現在地を示すとしたら? 「今日現在は、どうですかねえ。トータルで言うと去年の春に1軍で投げた後に浦和に来た瞬間よりも、ちょい下くらいじゃないですか。体はでかくなりました。そこはプラスですが。でも、これでもだいぶ戻ったんです」。そう言って、少し太くなった腕をさすった。 ――すべては、あの満員のQVCマリンで先発した西武戦ですか? 「そうですね。上で投げて結果が出ず自分探しの旅に出たって感じですかね」 自分探しの旅の先に待っていたのは地図のない暗闇だった。 2014年オフのドラフト2位。球界初の京大出身のプロ野球選手として注目を浴びた。大学出にしてはまだ線が細く肉体は未完成だったが、最速は147キロをマーク、勝負どころで決めるスライダー、フォークで三振も奪えた。キャンプ、オープン戦と評価を上げたが、開幕1軍は漏れた。それでも2軍で2試合続けて14イニング無失点の結果を残し、9連戦で先発が一枚足りなくなった4月29日の西武戦で、プロ初先発の大抜擢を受けた。レプリカユニフォームが配られるイベントデーだったことも手伝ってQVCマリンは満員札止めだった。 だが、田中はプロの洗礼を浴びる。制球が定まらず6安打3四球5失点で、わずか3回KO。最初のワンアウトをとることに苦労した。翌日から中継ぎ待機することとなり、さっそく巡ってきた5月1日の日ハム戦での登板でも、また制球に苦しみ、3回を投げ6安打4四球4失点と散々で、試合後2軍降格を通告された。