宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すず…「阿修羅のごとく」で奇跡のキャストが実現した背景
奇跡のキャスティングが実現した背景
――出し先が見えない段階で、「阿修羅のごとく」をやろうと決め、さらに宮沢りえさん、尾野真千子さん、蒼井優さん、広瀬すずさんのキャスティングを考えたのですか。 八木P:そうです(笑)。日本ではプロデューサーも、ディレクターも基本的にサラリーマンクリエイターがほとんどです。だから、TBSの八木とか、NHKの〇〇という肩書がまずあって。でも、サラリーマンなので60歳とか65歳で定年を迎えるわけで、フリーランスの今は、TBSにいた頃とは全く勝手が違うタダの人です。 ――これだけヒットドラマを手掛けてきた八木さんでも、ですか。 八木P:ええ。もちろん、それは覚悟していたことでした。会社の“看板”がなくなったからこそ、実際に企画を検討していただくには自分のイメージキャストだけでなく、「この方に出演を承諾いただいています」とお話しできて初めて交渉の場についていただけるので、まずは4人にお声がけしてお返事をいただいてから、是枝監督のほうにご相談に行きました。 ――大石静さんと宮藤官九郎さん共同脚本の「離婚しようよ」などTBS制作のNetflixオリジナル作品もありますし、そのプロデューサーの磯山晶さんもTBS退社後にNetflixと5年契約を結んでいますが、本作に関してはもともとNetflixとつながりがあったわけではないんですね。 八木:はい。そもそも「阿修羅のごとく」はNHKさんのドラマじゃないですか。僕がTBSにいたら、できなかったと思うんですよ。TBSでも向田さんの作品はありましたが、向田さん作品ではやっぱり「阿修羅のごとく」が最高傑作だと思います。TBSではできなかったものを、フリーだから挑戦できるところはありましたね。 ――「阿修羅のごとく」をいつかやってみたいと思ってきた過程で、脳内キャスティングしたこともあったのですか。 八木P:節目節目に読んでいましたが、その時はまだイメージキャストは湧いてきませんでした。しかし5年ぐらい前に改めて「阿修羅のごとく」を読んだときに、今回の4人がすぐ目に浮かびました。だから、よくキャスティング大変だったでしょうと言われますが、全然大変ではなく、自然に浮かんだ4人なんですね。 ――でも、実現するのは大変ですよね。 八木P:僕も今はフリーだから実際は難しいだろうなと思ったんです。でも4人にほぼ同時に交渉していくと、ほぼ2つ返事でOKをいただけたんですよ。 ――誰かをおさえてから、それを交渉材料に順番にあたったのではなく、交渉段階では誰も決まらないまま4人同時にあたったのですか。 八木P:そうですね。そうすると、4人の事務所の社長さんやマネージャーさんが必ずおたずねになったんです。「他の3人はどなたですか」と。そこは正直に「全部イメージキャストですが」と、他の3人の女優さんのお名前をお伝えしたんです。そうしたら、みなさん「実現したらすごいですね、素晴らしいですよね」と全員、ご出演の了承をいただきました。それと、やはり同時に、みなさんそれぞれ俳優として一度は「阿修羅のごとく」を演じてみたかったのではと強く思いました。