トランプ「掘って、掘って、掘りまくれ」は地熱も?シェール革命の技術転用の可能性、日本にも追い風か
米国のエネルギー業界では、多くの経営者は共和党支持、組合員は民主党支持だが、温暖化問題が政策課題に浮上してからは、その構図は選挙のたびに揺れている。 【図表】太陽光発電導入上位10州 民主党と共和党の支持者では、温暖化問題に関する考えが大きく異なり、温暖化対策を重視する支持者を抱える民主党候補は、温暖化対策を政策の大きな柱の一つとして打ち出した。 化石燃料の消費を減らし、実質的に温室効果ガスの排出量ゼロを目指す「脱炭素」が民主党の目標となった。たとえば、バイデン政権は、2035年に電源の脱炭素化、50年温室効果ガスの実質排出量ゼロを目標としている。 化石燃料生産に係る労働組合は、オバマ元大統領が温暖化対策を打ちだし、脱炭素を推進し始めた2000年代から、徐々に民主党離れを進めた。炭鉱労働者の組合である全米鉱山労組(UMWA)は、16年の大統領選では支持政党なしの立場を打ち出し石炭の復権を掲げたトランプ支持に回った。 だが、トランプ政権も、シェール革命により競争力を持った天然ガスの市場への浸透による石炭の減少を止めることはできず、UMWAは今年の選挙戦ではトランプ支持から離れた(【EV嫌いからEV好きに?】トランプの鼻息は荒くも強い市場の力、民主党と共和党のエネルギー政策をどう見るか )。 今もトランプの化石燃料推しの立場は変わらない。今年の選挙戦でも「掘って、掘って、掘りまくれ」と何度か発言した。石油、天然ガス採掘に対する具体的な支援策を、環境規制緩和、連邦政府所有地での採掘許可発行増などの形で就任後実現するとみられる。 では、バイデン政権が進めてきた再生可能エネルギー(再エネ)・温暖化対策支援はどうなるのだろうか。バイデンの電気自動車(EV)への支援については、トランプの有力支持者イーロンマスクが最高経営責任者(CEO)を務めるEV専業のテスラに必ずしも有利に働いていない(【トランプとマスクが自動車市場を破壊する?】メキシコ産への高関税は日本車にも影響必須、補助金廃止でEV販売はどうなるのか )ことから、打ち切りの可能性が高そうだが、再エネへの支援策の一部については、継続の可能性も高い。 さらに、再エネの中でも地熱については、支援策が強化される可能性も取りざたされている。シェールガス・オイル生産に利用された掘削技術が転用可能なのだ。次に掘って、掘って、掘りまくるのは地熱開発だ。