トランプ「掘って、掘って、掘りまくれ」は地熱も?シェール革命の技術転用の可能性、日本にも追い風か
なぜ地熱
石破茂首相が、就任後初の所信表明演説の中で強調したエネルギーが地熱だった。そう聞くと、主力電源の一つと思われるかもしれないが、23年度の発電量は34億キロワット時(kWh)。日本の総発電量9854億kWhに占める比率はわずか0.3%しかない。 地熱発電の総設備容量も50万kW。24年度の電力供給に利用される設備3億2695万kWの内0.2%を占めるに過ぎない。最大の地熱発電所の規模も11万kW。1基で100万kWを超える設備もある原子力、火力発電所との比較では小さい。 日本には火山が多くあり、地熱発電が可能な場所も東北、九州などに多くあることから、石破首相が所信表明演説で取り上げたのだろうが、これから開発を進めても主力電源になるには、まだまだ時間が掛かる。 米国でも事情は同じだ。23年の地熱設備の発電量は160億kWh。全発電量4兆1780億kWhの0.4%しかない。 そんな発電規模にもかかわらず、最近になり地熱が米国で注目を浴びている大きな理由の一つは、CO2を排出しない再エネ電源の中で安定供給が可能だからだ。 生成AIの利用拡大による米国の電力需要の見通しは、拡大する一方だ。24年5月の米国電力研究所の見通しでは、データーセンターの電力需要量は23年の1500億キロワット時(kWh)から30年に最大4000億kWhに拡大すると予測されていたが、9月に出された米コンサル・マッキンゼーの予測は30年に需要量は6000億kWhまで拡大するとしている。 今後のIT機器の省エネ、GPU(画像処理ユニット)の効率向上、光電融合(内部回路を電気でなく光でつなぐことで電力消費が削減される)の進展など不透明な点が多くあるものの、データーセンターの電力需要が大きく増加するのは確実だ。 データーセンターは365日、24時間電力供給が必要だ。発電が不安定な太陽光、風力発電設備からの供給では賄えない。 GAFAMと呼ばれる、グーグル、アマゾン、マイクロソフトが今秋相次いで、米国でデーターセンター新設用の電源として原子力発電所の電気を利用する、あるいはデーターセンターの近くに小型モジュール炉(SMR)を新設し、電力を供給する計画を明らかにした。アマゾンはSMRの事業者に投資する計画も発表している。 再エネの中でも地熱は、いつも発電可能だ。電気をAIの需要地、都市部近くのデーターセンターに送るよりも、地熱発電所の近くにデーターセンターを建設し情報を送るほうが、送電線新設よりも簡単で安上がりな可能性もある。 安定的な電力供給への需要が米国で急速に高まっている背景に加え、地熱が注目されるもうひとつの理由は、「掘って、掘って、掘りまくれ」に関係する新技術にある。トランプの熱心な支持者が持つ技術だ。