衆院与党過半数割れで政治の混迷が強まる:金融市場は不安定化:財政拡張傾向が強まり、日銀追加利上げは後ずれか
財政拡張傾向が強まり大型経済対策の実施か
与党が政権を維持するために野党の一部に協力を仰ぐことになる場合、その野党の政策の一部を受け入れることを余儀なくされるだろう。その結果、経済政策はより財政拡張的に、そして金融緩和を継続する方向に修正される可能性がある。 石破首相は、選挙後は補正予算編成を伴う経済対策を実施する考えを示してきた。その規模は国費ベースで昨年の13兆円を上回るとしているが、野党の一部の協力を得る場合には、低所得層に限らずより広範囲な国民を対象とする給付金を支給するなど、規模が大きくなるだろう。さらに将来的には、与党が反対する消費税率の引き下げや消費税の廃止などを、協力する野党から求められる可能性もあるだろう。 国民民主党は基礎控除等を103万円から178万円に引上げ、年少扶養控除を復活させる所得税減税、実質賃金が持続的にプラスになるまで消費税率を一律5%とする消費減税を公約としている。短期的な物価高対策としては、ガソリン価格を引き下げるため、トリガー条項凍結解除、二重課税廃止によるガソリン減税、再エネ賦課金徴収停止による電気代値下げを主張している。日本維新の会も、消費税・所得税・法人税の減税を断行するとしている。
政治の混迷が強まり金融市場は不安定化:日銀追加利上げは先送り方向
金融緩和継続に前向きな野党の影響力が強まることで、日本銀行の追加利上げの時期は先送りされる可能性が高まるだろう。政治不安を映して株安・円高が一段と進む場合には、その可能性はより高まるだろう。追加利上げは来年1月になることを現時点では標準シナリオとするが、金融市場の不安定化が長期化する場合には、さらに後ずれする可能性もある。他方、米国側の要因で円安傾向が強まる場合には、年内の追加利上げの可能性も出てくるのではないか。 政治の混乱が強まり、先行きの政策への不確実性が強まることは、金融市場では株安要因となるだろう。金融緩和継続期待は円安要因となるが、他方で、政治不安を映したリスクオフ傾向は、円高要因となる。この先、円高・株安がスパイラル的に進む可能性もあるのではないか。 28日朝のオセアニア市場でドル円はやや円安に振れているが、日経平均先物は下落している。同日の東京市場で政治不安を映して株価の下落傾向が強まれば、ドル円レートは円高に振れ戻される可能性があるだろう。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英