<戦後70年>「戦争」とは何か? 脅威の増幅と安全保障のジレンマ
「安全保障のジレンマ」解消がカギ
こうした状況で、為政者にとって「脅威」を強調することは、支持を集める一番手近な手段になり得ます。しかし、それは疑心暗鬼を拡散させ、結果として世界大戦期にも冷戦期にもあった「自国の安全のための防衛力強化が、かえって相手国の不信感と軍拡を促す」という「安全保障のジレンマ」を加速させます。 「ソ連の脅威」を強調して1981年の米大統領選を制したロナルド・レーガンは、しかし結局はソ連共産党書記長ミハイル・ゴルバチョフとともに、冷戦終結に道筋をつけることになりました。膨大な軍事費を含む巨額の財政赤字に苦しんでいた米ソ両政府は、情報公開や諸々の交流を通じて「脅威」の認識を転換することで、冷戦を終結させたのです。これに鑑みれば、「安全保障のジレンマ」を抜け出す新たな道筋を示すことが、各国政府に求められる建設的な作業といえるでしょう。
------------------------------------------------------ ■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬社)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。Yahoo! ニュース個人オーサー。個人ウェブサイト