虎のソナタ めまぐるしい「セ・リーグ優勝戦線と秋の空」 トンボが舞うころ甲子園歓喜に包まれてほしい
(セ・リーグ、阪神2-1ヤクルト、23回戦、阪神14勝9敗、15日、甲子園)外を歩けば異例の長く厳しい残暑が続いているが、球界ではじんわりと「秋」が進む。各球団で連日のように引退表明やセレモニーが行われ、この日は阪神・秋山拓巳の涙、涙の引退会見もあった。 甲子園のグラウンドでは、同じく今季限りで現役を退くことを表明しているヤクルト・青木宣親が、試合前練習で早大の大先輩にあたる阪神・岡田彰布監督にあいさつをして話し込んでいたという。野球記者歴ウン十年の還暦虎番、ビヤ樽こと三木建次も珍しくしんみりとした雰囲気だ。 「やっぱり寂しいよなぁ。まだ暑いのに、もうそんな季節かと思ってしまうな」 ビヤ樽ははっきりと覚えている。昨年リーグ優勝が決まった9月14日には、自分がジャケットを羽織り、気合を入れて甲子園へ乗り込んでいたことを。「ことしはとてもじゃないけど上着なんて着ていられない。14日はノドが乾きすぎて、ペットボトルのミルクコーヒーやサイダーを4本も飲んだわ。そういえば少し前に、岡田監督も今季の甲子園の異変について話していたな」。甘い飲み物の過剰摂取はいつものことなので、話の続きに耳を傾けてみる。 「練習を一緒に見ていたときに、監督がふと甲子園の芝生を眺めながら『そういえばことしはトンボが飛んでへんなぁ』とつぶやいていたんや。『秋は風の向きが変わるのに、まだ変わらんな』とも言ってた。ものすごく鋭敏な感覚の人やから〝長すぎる夏〟のグラウンドへの影響も感じ取っているんや」 そこでビヤ樽は、誰より甲子園球場に詳しい人物に「ことしは毎年秋に飛ぶはずのトンボがいないのでは?」と取材してみることにした。「神整備」でおなじみの阪神園芸・金沢健児甲子園施設部長、その人だ。 金沢氏は「例年に比べると少ないけど飛んでいるのは見ますよ。ただ、午前中が多いですかね。暑いからか、芝生の上にとまっている時間も短いような気がします」と教えてくれたという。練習が始まる何時間も前からグラウンドの手入れを行うプロたちも、やはり岡田監督がパッと感じ取ったことと同じで、トンボの少なさを感じていたのだ。 そこに金沢氏の部下の若手スタッフも加わって「そういえばきのう(14日)は1匹も飛んでなかったですね」なんて話でちょっぴり盛り上がった。ビヤ樽は年がいもなくワクワクして「トンボたちはどこから来てどこへ帰るんやろう?」とさらに尋ねて、おふたりを困らせたんだとか。阪神園芸さんはグラウンドをならすT字型の〝トンボ〟の扱いはご専門だけど昆虫博士じゃないんだから、そちらのトンボの取材はそれくらいにしておきなさい…。