お金や学歴があってもなくてもできる「本当の親孝行」
子供に対してなすべき5つの行為
六方礼経には、「親に対して子供がなすべき5つのこと」の対として、「子供に対して親がなすべき5つのこと」も説かれています。併せてご紹介しておきましょう。子供は親の所有物ではありませんから、変に干渉したりせず、相手の人生の邪魔をせず、これらの5つを守っていれば親と子供は良好な関係を築いていけるのです。 【子供に対して親がなすべき5つのこと】 1.子供を悪に染めない 子供たちは、善悪の区別が分かりません。悪いことをしていたらやめさせる。叱る時は叱る。子供が何をしても叱らないといった教育もあるようですが、何が悪いか、何をしてはいけないか、何が恥ずべきことなのかをしっかりと教えるのは親の務めです。 2.子供の善い行いを奨励する 「人に親切にできたね」「ありがとうが言えたね」「家のお手伝いを頑張ったね」などと、善い行いをした時に褒めてあげないと、子供はそれが善いことかどうか分かりません。褒めることをしない親は怠慢だと言えるでしょう。 3.教育を受けさせる 親だけですべてを教えるのは難しいもの。先生をはじめ、親以外の人から学び、子供に教育を受けさせることは親の務めです。 4.子供が適齢期になったら結婚させる 現代は多様性の時代と言われますが、価値観なんてものは太古の時代から多様です。人間が1億人いれば、1億通りの考えがあるのです。2600年も前に「子供にふさわしい結婚相手を見つける」とお釈迦さまが説かれていたということは、昔から皆、もっと遊んでいたいと結婚したがらなかったのでしょう。とはいえ、子孫を繁栄させていくためには年齢の限界もあります。子供に結婚を勧めるのも、子供が連れてきた人がふさわしい相手かを見極めるのも親の役目です。 5.時期が来たら財産を相続させ管理を任せる 親の遺産を相続するのは子供の当然の権利と考えている人もおられるようですが、自動的に受け継ぐ仕組みもおかしなものです。好き勝手に使わせるために財産を残すのではありません。本来は、子供が一人で自立できると認めることができて、ようやく相続させるのです。 子供は親をよく見ています。あなた自身が親に対してなすべきことをしている姿を、しっかり覚えているはずです。親孝行とは、大金を稼げるようになることでも、高価な品物を買ってあげることでもありません。本当の親孝行とは、子供自身が成長し自立すること。そしてあなた自身が心穏やかに生きることです。 年末年始にご実家へ帰省して両親に会う人も、すでに両親が亡くなられている人も、お金や学歴があってもなくてもできる「本当の」親孝行、ぜひ心に留めて過ごしてみてください。 (取材・文=尾崎悠子)
大愚 和尚