お金や学歴があってもなくてもできる「本当の親孝行」
親に対してなすべき5つの行為
六方礼経の中には、親と子供それぞれが果たすべき役目が書かれています。まずは子供から親に対し、なすべきことは5つあります。 【親に対して子供がなすべき5つのこと】 1.年老いた親を養うこと 子供が生まれると、親は自分の時間を犠牲にして育てます。そんな、自分を育ててくれた親が老いていく。今度は子供が親を養う番です。しかしそれは、社会人として自立していないとできません。ですから、子供がしっかりした社会人に育つのは、親にとって何より喜ばしいことなのです。 日本は、「8050問題」という、80代の親と自立できていない50代の子供が、社会から孤立してしまうという問題を抱えています。もちろん、お子さんが自立困難な障害を抱えておられるような場合は別ですが、親がいつまでも心身が健康な子供を養うのは、自然界において異質なことなのです。 2.親の義務や責任を代わること これまで、子供を学校に行かせたり、近所付き合いをしたり、税金を納付したりと、親が社会の義務を果たしてきたからこそ、それぞれの家庭が守られてきました。現役を引退した後も、地元地域との関わりがなくなるわけではありません。例えば、神社の役員を務めるなど、社会とのつながりは意外に多いものです。こうしたことの肩代わりをしてあげることは大事です。 また、歳を取っていくにつれて、行政の手続きや申請書類の記入、支払いなど込み入った作業が困難になっていきます。滞りがちな手続きなどを代わってあげるのも、親に対してなすべきことの一つです。 3.家を守ること これは「住んでいる家を守る」といった物理的な意味ではなく、「家の家訓を守る」ことを指します。平たく言えば、親の顔に泥を塗らないということ。会社には会社の格があり、問題を起こすと会社の名前に傷が付くのと同じように、家の名前が傷付きます。「こんな家に自ら望んで生まれてきたわけじゃない」などと悪態をついても、傷付くのは親です。親が大事にしている家に、迷惑をかけたり、恥をかかせたりすることは親不孝なことなのです。 4.親が築いてきた資産を管理すること 世の中には、親の資産を受け継いだ時、お金がたくさんあるからと豪遊してすべて使ってしまう人もいます。その資産は、親だけでなく、祖父母の代からコツコツと守られたものかもしれません。親が守ってきたものを受け継ぎ、無駄にせず管理することも子供の務めです。 5.親が亡くなったら供養をすること 住んでいる国や地域、または宗派によっても供養の仕方は違いますが、仏教的には、法事を行いお坊さんから仏の教えを聞くのが一番の供養です。亡き親を振り返る機会は、自己反省をしたり、己のルーツを探ったりすることにもつながります。 ご覧の通り、この5つには「たくさんお金を稼げるようになること」「高級な食べ物を贈ってあげること」といった教えは一つも入っていません。仏教は人格の成長を促すものです。安心して親が先に死んでいける、そんな子供に成長することが何よりの親孝行なのです。 こういった話をすると、「親から虐待を受けたり、いわゆる毒親であったりしても、なすべきですか?」と聞かれます。 答えは迷わず、「はい」。それを聞いて、実際にするかしないかは、個人の自由です。虐待を受けていた人は相当な恐怖や恨みを抱いていますから、簡単にはできないかもしれません。しかしそのような親であっても、前述したなすべき5つの役目を行うと自分自身がうまく生きられるようになります。 仏教は好き嫌いの感情で物事を判断しません。5つの役目を行うことで、子供は親に対しての責任を全うできます。自身が親を超え、客観的に「あぁ、親も一人の不器用な人間だったのだ」と親を俯瞰して眺めることができた時、心に平穏が訪れるのです。