ゲーム内の「村人のセリフ」をChatGPTで大量生成する方法(第2回)。データを大量に出力する
その他の改善しうる点
たとえば今回のセリフでは、世界設定にある大筋しか物語が登場していません。しかしRPGではロールプレイによって編まれる物語が不可欠です。この村で生じるイベントを定義し、そのイベントに対し各人がどう反応するかはゲームとして必要でしょう。 村人間の関係の露出がセリフに少ないのも不足です。人物の詳細生成時に盛り込むことで、より関係が登場するようになり、社会を認識しやすくなるでしょう。 主人公の状態への反応、時間と季節、不和や問題、経済、資源や欲求など、盛り込んで改善できそうな点は他にも色々あります。コンテキストの大きさという制約もあって全ては盛り込めませんが、ゲームの要件に応じて設計し、収まる範囲なら十分投入可能なテキストを生成できると考えています。
まとめ
今回のように大量の創作的テキストを生成するのは、かなりゲーム的な要求です。小説でも漫画でも基本は入念に設計された物語を構成する文章が必要であって、読まれるかも分からない大量のテキストにあまり出番はありません。他に必要とするのは事典のような形式で世界を作る場合ぐらいかもしれません。 プレイヤーが掘り起こすことで世界を体験する濃度が変わる類のゲームでは、名文ではない無数の表現が必要です。これまでそうしたゲームを個人や小規模なチームが作ろうとすると、テキスト制作は厚い壁のひとつでした。ChatGPTに限らず、生成AIはそうした壁をかなり薄くしてくれる可能性を持っています。 なお今回はコストと分かりやすさ、手早さのためにChatGPTを利用しましたが、実際にゲーム制作で利用するには効率が悪すぎます。コンテキストに込める文章の生成はChatGPTで行っても、コンテキストを組み上げたりセリフのバリエーションを生成したりする部分には、APIを使いツールを作るべきでしょう。 私は今、Glimnoteという世界の設定や人物の関係を生成AIを使いながら構築するサービスの制作に関わっています。一方で個人の実験としてゆっくりですが、今回のような生成をもっと柔軟に行えるツール作りも進めてきました。ゲーム配信プラットフォーム最大手が生成AIの利用そのものは拒絶しなくなったことで、こうしたツールは今後たくさん登場するだろうと考えています。 生成AIに関する社会の衝突は起き続けていますが、多様で大量の既存の表現から柔軟に新たな表現が導出できるという技術そのものは、いずれゆっくりと全体に受容されていくのではないでしょうか。そうした日を意識しつつ、ゲーム制作や世界を作る遊びへの応用を試し続けていこうと思います。
kogu@TechnoEdge