データが語るマー君の復調気配。その裏に「バックフット」あり
では、この左打者に対するバックフットスライダーは、田中という投手にとってどんな意味を持つのか。 田中によれば、まず、こんな前提があるよう。 「(相手)バッターは、(自分に対して)スプリットの意識が多いと思う」 だからこそ、バックフットスライダーが生きる。 「追い込んでから、真下に落ちるスプリットと、左バッターの足元に食い込んで落ちていくというボールは、その軌道に違いがあるので、(相手が)スプリットを意識して、その軌道に合わせにいったら、空振りをする」 実際、バックフットスライダーで空振りを取る確率は高く、brooksbaseball.netのデータによれば、大リーグでのキャリア平均(7月21日現在)は72.38%。6月23日以降は85.71%となっている。
マリナーズ戦の三回 、ロビンソン・カノーから三振を奪ったが、この球こそ、バックフットスライダー。初回、カイル・シーガーを真ん中低めのスライダーで三振を奪ったが、これも捕手は内角低めに構えており、狙いはバックフットだった。 当然ながら逆もまた然りで、この球を相手に意識させられれば、スプリットも生きてくるはずである。 さて、さらにデータを確認すると、リリースポイントにも変化がうかがえた。 田中は今年、5月20日のレイズ戦から6月6日のレッドソックス戦まで、プレートの三塁側を踏んで投げていた。この4試合を除外し、4月2日の開幕から5月14日までと、6月23日以降の4シームのリリースポイントを比較すると、以下(図5、6)のようになった。
この2つの図を見ると、6月23日以降のほうが、はるかにリリースポイントが安定していることが分かる。これは、例えばスライダーでも同じような傾向が出ており、それを示したのが、図7と図8である。
6月23日以降(図8)の方が、リリースポイントが一定している。 では、そのリリースポイントが安定していることと、状態の良さ、あるいは結果とどんな関連があるのか。田中に聞くと、まずはこう言った。 「自分のやろうとしていることが、出来ているからじゃないですか」