自民総裁に石破氏、「新しい資本主義」加速へ-岸田路線を継承
(ブルームバーグ): 自民党は27日の総裁選挙で、石破茂元幹事長を新総裁に選出した。10月1日召集の臨時国会で第102代首相に指名される。
決選投票で高市早苗経済安全保障担当相を破った。党員を含めた1回目の投票では2位だったが、高市氏を逆転した。就任記者会見では、物価を上回る賃金上昇を実現するために、「新しい資本主義にさらに加速度をつけてまいりたい」と強調。経済財政運営に関しては、成長と分配の好循環を目指した岸田文雄政権の路線継承を明言した。
総裁選の政策集では「経済あっての財政」を掲げつつ、財政状況の改善を進める方針も明記。「岸田総裁が一生懸命、努力をしてこられたデフレからの脱却を確実なものにしなければならない」と会見で述べた。
今回の総裁選は、大規模な金融緩和や積極的な財政出動を進めた安倍晋三元首相の継承者とされた高市氏ではなく、安倍氏と距離のあった石破氏を選ぶことで、アベノミクスへの回帰を否定する結果となった。石破氏は8月上旬に出版した著書で、日本銀行による異次元緩和の長期化により、「国家財政と日銀財務が悪化した」と疑問を投げ掛けていた。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、石破氏について日銀の独立性を尊重しつつ丁寧な対話を行い、「経済実態に見合った、経済を冷やさない速度での正常化」を容認すると指摘。財政政策に関しては「経済あっての財政」との発言を踏まえ、「緊縮財政は志していないけれども、財政規律も一定程度配慮するというバランスのとれたスタンス」になるとみている。
石破氏の新総裁選出後、外国為替市場の円相場は急反発し、一時前日比1.4%高の1ドル=142円80銭を付けた。利上げに反対する高市氏が決選投票に進んだ後には、日銀が追加利上げに動きにくくなる可能性が警戒され、146円台半ばまで下落していた。シカゴ市場の日経平均先物は一時4%超急落。日経平均株価は27日終値で2.3%上昇し、8月の暴落前の水準を回復していた。