「笑顔で終われたと思います。本当に」さらば大田泰示…巨人→日ハム→DeNA、永遠の野球小僧は大舞台に無縁でも「日々を一生懸命やり切った」
ファーム生活にも気落ちはせず
DeNA3年目の今季の大田は、3月に左腿裏を痛め出遅れると、そのまま一軍に呼ばれることなくファームでの生活がつづいた。序盤こそ怪我の影響で調子が上がらなかったが、8月と9月は打率3割超えと踏ん張りをみせたものの、優勝争いをしていた一軍から声が掛かることはなかった。プロ入りして以来、一軍登録なしは初めてのことだった。長いファーム生活に気持ちが荒むことはなかったのだろうか。 「いや、それはなかったですよ」 笑みを浮かべつつ、大田はシリアスな声でつづけた。 「ファームとはいえ試合に出させてもらっていましたし、今年は優勝争いもして面白かったし、やりがいもありました。今日勝ったら何ゲーム差だよね、なんて若い選手たちと話したり、『泰示さん、今日は頑張りましょう! 』と言ってもらえたり。若い選手たちと一緒にやれて気持ちも若く保つことができ、そういった意味では気を落とすことはありませんでしたね。目の前の試合に向かって、しっかり準備するのがプロ野球選手ですから、そこは変わらず継続できたと思います」
野球をつづけるつもりだった
ファームの試合、大田は一軍にいるときと変わることなく、ベンチで誰よりも声を出し、仲間を叱咤激励していた。 「それをやりつづけられたことも、自分にとっては大きな財産ですね」 決してブレず、手を抜かない男、それが大田泰示だ。 9月28日、DeNAは42年ぶりのイースタンリーグ優勝を決めた。その翌日の横須賀スタジアムでのファーム最終戦で大田に会い「まだ、選手をつづけますよね?」と問うと、「そのつもりでいます」と覚悟するように言った。野球が天職だと言って憚らない熱血漢。どんな形であっても、プレーしつづけるのだろうなと思っていた。 その証拠に、大田は自由契約を伝えられたあとでもファーム日本選手権にも出場し、4打数2安打を放ち日本一に貢献している。
胴上げされるのは固辞した
優勝が決まった際、若手選手を中心に大田を胴上げしようと声があがったが、これを丁重に断っている。 「思い出深い試合になりましたね。青山(道雄)監督の最後の試合だったから、試合前に『優勝して終わろうぜ! 』って盛り上がったんですよ。僕からすれば、ジャイアンツ出身の入来(祐作)さんや東野(峻)さん、中井(大介)さんもいたし、西浦(直亨)や楠本(泰史)、村川(凪)といった戦力外通告された選手と一緒に参加して戦うのは特別なものがありました。えっ、胴上げですか? すごく気持ちはうれしかったし、ありがたかったけど、あのときはまだ現役をつづけたい気持ちだったので、なんかこれ(胴上げ)やっちゃうとねえ」 そう言うと、大田は苦笑した。
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