「正直、引退も考えたんです」「“勝てるわけない”と…」パリ五輪で日本勢“過去最高順位”なのに? ハードル女王・福部真子(29歳)が感じたリアル
五輪決定→日本新記録…それでも「上がらない」気持ち
7月の実業団・学生対抗選手権では、自身の日本記録を更新する12秒69(+1.2)をマーク。調子を上げているように見えたが、このとき、本人の気持ちはすでに沈みかけていたという。 「現実がわかりすぎ始めました。12秒69を出した時、この感じなら本番で出せても12秒60までだと思ったんです。スタートを改善したらこれぐらい、みたいなイメージが自分の中にあって。12秒5台となると、1段階上のギアで、もっと早い段階で最高スピードに入ってそれを維持しなきゃいけない。それは、今の自分では足りなすぎる。言葉に出すと本当にそうなりそうで、無理やり『決勝に行く』と言い続けて自分を奮い立たせました。でも、オリンピックに臨む前から、自信はゼロでしたね」 五輪本番でも、海外選手とのフィジカル差に圧倒された。ウォーミングアップ会場では、日本の女子ではほとんど見ない「すり足」でのスタートダッシュをしている。接地の音は「ドンッ」とすさまじい。気にしないように、ワイヤレスイヤホンで周囲の音を消すのに精いっぱいだった。 「勝てる訳がないと思うんですよ。例えば、小中学校の体育の授業で、男の子と一緒に走ろうって言われた時と同じ心境。そこで『勝とう』とは思わないじゃないですか。動けば動くほど、違いを歴然と感じたんですよね」 勝負の準決勝。福部は12秒89(-0.7)の組5着だった。 電光掲示板でその数字を確認すると、思わず下を向き、目をつむった。 決勝進出のボーダーラインは、福部の前に4着でゴールしたフランス選手。ただ、タイムは12秒52と、0秒3以上の壁があった。めざしてきた「12秒50切り」が、やはり決勝進出への目安になっていた。 タイムを見た瞬間、福部の目の前は「真っ白」ではなく「真っ黒」だったという。 引退を思い直し、広島に戻ってパリ五輪をめざし3年以上が経った。 この間、自分には何かができたのか。なぜ、望んだ結果を出すことができなかったのか。簡単に受け入れられなかった。
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