反・中国共産党の勝利も習近平の中台統一の野望は加速!! これから中国が台湾に仕掛ける苛烈いやがらせの中身
台湾の新しいトップに就任するのは民進党の頼清徳(らいせいとく)氏! 中国との対決姿勢を示し続けた蔡英文総統の意志を継ぐ彼に対して、「台湾の統一」を大目標に掲げる中国・習近平国家主席による圧力はどんな様相を見せるのだろうか? 「中国」を取材し続けるルポライター・安田峰俊氏が解説する! 【写真】「台湾AIラボ」設立者のイーサン・トゥほか * * * ■中国製AIの世論工作 1月13日に投開票が行なわれた台湾の総統選は、与党・民進党の頼清徳候補が総統(大統領に相当)に当選した。 民進党は一般に、台湾アイデンティティが強く、中国大陸とは距離を置く政党とされる。頼清徳は開票後の演説で「(今回の結果で)台湾が権威主義の側ではなく、民主主義の側にあることが示された」と、西側諸国との絆を強調してみせた。 一方、自国による台湾併合を狙う中国は強い不満をにじませている。選挙結果の大勢が判明した13日夜には、中国外交部のスポークスパーソンが定例記者会見の席で「台湾問題は中国の内政」と主張。台湾は自国の一部であるとする従来の主張を繰り返した。 中国は台湾の選挙に対して、さまざまな介入工作を仕掛けたとみられている。まずはそれらを見ていこう。 * * * 「2013年~22年の期間、台湾はネット上のニセ情報に対して世界で最も闘ってきた国である」 スクリーン上にそんな言葉が躍る。選挙直前の1月10日午後、台北市内の非営利研究所「台湾AIラボ」で開かれたシンポジウムでの一幕だ。 17年に設立されたこの機関は、人工知能の医療活用などの事業のほか、中国のディスインフォメーション工作(意図的な誤情報の流布)の研究を手がけている。 ラボの設立者はイーサン・トゥ(杜奕瑾)という。彼は台湾世論に大きな影響力を持つ大規模掲示板「PTT」の創始者であり、マイクロソフトで音声認識ソフト『コルタナ』の開発に従事してアジア太平洋地区の総責任者も務めた、台湾を代表する天才プログラマーだ。 「工作アカウントの投稿は、PTTのほかフェイスブック、X、YouTube、TikTokなど各プラットフォームに及んでいます」(トゥ) 投稿の内容は、このまま民進党に政権を任せれば中国大陸との戦争の危機が高まる、有事の際にアメリカは台湾を助けないといった外交に関するものや、過去8年間の民進党政権の内政の失敗をあげつらうものが多い。