「健康診断で腎機能障害を指摘」その後にやるべきことを知っていますか? 沈黙の臓器“腎臓”の機能について
健康診断にはさまざまな項目があり、定期的に受診することであなたの体の健康状態を評価する重要な検査です。健康診断を受診して「腎臓の機能について指摘をされたけど、どうすればいい?」と悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか? 腎臓の機能を調べる検査の基準値 そこで今回は、腎臓の働きや腎機能評価の方法、異常を指摘されたときにやるべきことなどについて、腎臓専門医の青柳誠先生(西新井大師西腎透析クリニック副院長)にお聞きしました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
腎臓の健康状態を診断する腎機能評価はどうやって行う? 腎臓の働きやeGFR・クレアチニン・尿たんぱくなど検査項目について
編集部: 腎臓の働きについて教えてください。 青柳先生: 腎臓は握りこぶしほどの大きさの臓器でさまざまな働きをしており、最もわかりやすいのは「尿を作る」という役割です。具体的には、血液から老廃物を取り除き、尿として排出します。 この時、尿の量や濃さも調節できるので、体内の水分バランスや電解質、pH値の調整などに役立っています。また、「尿を作る」だけではなく、血圧の調整をするホルモンや貧血を治すホルモンの産生、ビタミンDの活性化も担います。 編集部: 腎臓の機能はどのように調べるのですか? 青柳先生: 血液検査である程度の腎機能がわかります。具体的には、健康診断などで行う血液検査の「クレアチニン」の値で、腎機能が確認できます。 クレアチニンとは筋肉の老廃物で、腎臓より排出されるものです。腎機能が悪化すると、クレアチニンが腎臓から排出できなくなるため、クレアチニン値が上昇します。 ただし、クレアチニン値は軽度の腎機能障害ではあまり上昇しないので、見逃されてしまうこともあります。 編集部: ほかにはどんな検査項目がありますか? 青柳先生: 「BUN」という項目を見たことがある方も多いと思います。BUNは血清尿素窒素のことで、腎臓より排出されるたんぱく質の老廃物です。 腎機能が悪化するとBUNは上昇しますが、たんぱく質摂取などの食事内容に影響されるため、クレアチニンと比べると少し不正確になってしまいます。 編集部: 正確な数値が知りたい場合は、どの検査を受ける必要がありますか? 青柳先生: より精度の高い腎機能を知りたいときは「イヌリンクリアランス」という検査により「GFR(糸球体ろ過量:glomerular filtration rate)」を実測します。GFRは腎臓のろ過能力の指標で、腎臓で1分あたり何mlの原尿が作られているかを表します。 基準値は約100ml/分/1.73㎡です。 しかし、イヌリンクリアランスはイヌリンの点滴が必要など非常に煩雑な検査ですので、実際に行うことはほとんどありません。 代わりに血清クレアチニンの値と性別と年齢から推算する式を使って算出するeGFR(推算糸球体ろ過量)を用います。こちらも正常値は100ml/分/1.73㎡前後です。 編集部: 異常値はどのくらいでしょうか? 青柳先生: 基準値の詳細は以下の通りです。 G1(正常または高値) ≧90 G2(正常または軽度低下) 60~89 G3a(軽度~中等度低下) 45~59 G3b(中等度~高度低下) 30~44 G4(高度低下) 15~29 G5(高度低下~末期腎不全) <15 ※腎機能区分(腎臓機能) 数値(ml/分/1.73㎡) 編集部: では、尿検査ではどのような項目がありますか? 青柳先生: 主に尿蛋白と尿潜血があります。 通常、たんぱく質が尿から漏れることはないのですが、腎臓に何らかの障害があるとたんぱく質が尿から漏れてしまい、尿検査で尿蛋白の項目が陽性となります。 尿潜血は、尿に血が混じっていないかを調べる検査です。腎臓でろ過が行われる糸球体で何らかの炎症があると陽性になりますが、腎臓の機能に問題がなくても、尿の流れ道に石や腫瘍、感染、傷などがあると尿に血が混じってしまい、尿潜血が陽性になることがあります。 以下に検査項目とその基準値を示します。 (基準値は年齢などによっても異なる場合があり、あくまで目安です) 尿蛋白……陰性(0.15g/gCre未満) 尿潜血……陰性 eGFR……60ml/分/1.73㎡以上 血清クレアチニン濃度……男性:0.65~1.09 mg/dL、女性:0.46~0.82mg/dL 尿素窒素(BUN)……8~20mg/dl