食品物流大手が支払運賃を全面引き上げ 委託ドライバーの所得改善へ本腰
食品3PL大手のキユーソー流通システムは今年度中(24年11月期)にも委託物流業者への支払運賃を引き上げる。昨年12月の改定に続くもので、前回と同様に全国71社のすべての委託業者を対象とする。引き上げ総額は10億円弱を見込む。荷主から得る輸配送料金の適正化などで得た原資を委託先に振り向けることで、トラックドライバーの所得・労働環境の改善につなげる。
業界大手のキユーソー流通が2度目の条件改善
同社の今上期業績(23年12月~24年5月)は営業収益5.7%増の953億5100万円、営業利益75.2%増の32億3900万円と大幅増益で着地。前年同期に鳥インフルエンザの影響で縮小した鶏卵配送の回復に加え、タイトな輸送需給環境に応じた受託料金・受託条件の見直しが進んだことが大きい。 「物流の2024年問題に対する荷主の方々の理解が深まり、料金や(納品リードタイム、納品頻度などの)届け方についてご協力いただける部分が増えてきた」(富田仁一社長) しかし、4月に施行されたドライバーの時間外労働規制による輸送能力不足のリスクが緩和されたとは言い難い。「4月以降、(物流環境に)目に見えて大きな変化はないが、労働時間管理が難しくなったために、長距離輸送から地場配送に転換する業者が増えている。荷主が多くて仕組みを変えにくい共同配送から撤退する動きもある」(富田社長) こうした動きが不足する国内長距離輸送能力のさらなる低下につながる可能性は否定できない。同社は受取・支払双方の対価改善によって物流持続性の向上に継続的に取り組むほか、物量の少ない土曜日を休配とする新たなサービス体系の整備・浸透など、ドライバーの労働環境改善に向けた施策を一段と加速させる考えだ。
日本食糧新聞社