乳幼児期に見られる「ASD・ADHDの子どもの言動」とは?
最近になり、「発達障害」という言葉が広く認知され、関連する書籍やテレビ番組など、各種コンテンツが数多く発信されています。このこと自体はプラスに捉えるべきでしょう。 ただし、当事者や彼らを取り巻く家族、関係する人々の実感としては、「いまだに十分な理解が得られていない」もしくは「サポートをするうえで、よくわかっていない部分も実は多い......」というところでしょう。 今回は、精神科医として発達障害の子どもたちへの臨床経験も豊富な、昭和大学医学部教授の岩波明医師による新著『発達障害の子どもたちは世界をどう見ているのか』より、「乳児期・幼児期に、どんな言動が見られるのか?」についてご紹介します。 ※本稿は岩波明著『発達障害の子どもたちは世界をどう見ているのか』(SB新書)から一部抜粋・編集したものです
「この子は他の子とは違うかも」と気づくきっかけ
我が子の遊ぶ姿を見ながら、「ウチの子はちょっと変わっているかもしれない」と感じた。クラスの子どもたちの中で「○○ちゃんはときどき変わった行動をするよね」と言われることがあった。 そんなふうに、子どもの「言動に対する違和感」をきっかけにして、自治体の窓口に相談したり医療機関を受診したりすることによって、発達障害と判明することがよくあります。 では、発達障害の子どものどのような言動から、周囲は「この子は他の子とは違うかも」と気がつくのでしょうか? これについては、何か決定的な要因というものがあるわけではありません。 ・「この言動が見られたら(見られなかったら)発達障害である」というわけでは決してない ・発達の段階には個人差があり、年齢との関連はあくまでも目安に過ぎない ということをあらかじめお断りさせていただきつつ、いくつか挙げてみます。
乳児期(0歳~1歳まで)にはどんな特徴が見られる?
乳児期は、大人とのコミュニケーションの際に抱く違和感が、気づきのきっかけとなります。ただしこの時期には明確な症状はなく、診断をつけることは難しく、診断がついたとしてもその後変更になることもまれならず見られます。 ASD(自閉症スペクトラム障害)において挙げられるのは、対人関係における障害で、「視線が合わない」ことや「人の顔を見ながら反応を確認しようとしない」ことなどが特徴的です。 人は生まれながらに他人の顔に注意を向ける傾向にあり、生後3~5ヵ月の早い段階から視線を合わせ、見つめることができるようになるのが一般的です。 そのため、「視線を合わせる」「親の顔を見る」というきわめて自然な行為が見られないことには違和感を覚えます。