認知症の母の死後に妹弟が「家を売却しろ」。“売れない家”が招く泥沼の相続トラブル
親が生前のうちに適切な対処をするのが一番
――そうした、子どもの間で争いとならないための予防策はあるでしょうか? 丸岡:実家に対する思い入れが強くて、そのまま残しておきたい、あるいは子の1人がそこに住みたいとなることは、どうしても多いと思います。 ですが、家しか相続する資産がないのなら、親がまだ元気なうちに、親の意思できれいさっぱり売ってしまう、あるいは子に相続してしまうのが一案です。親は賃貸に住み替えるなど負担はあるでしょうけれど、親が亡くなってトラブルの火種になるリスクを考えると、円満な一つの選択肢となりえます。あるいは、しっかりと遺言書のかたちで、どうしたいか書き残しておくことです。 そのためにも、親が元気なうちに、子どものほうから持ちかけて、将来の相続についてよく話し合うことが重要と考えます。
固定資産税がいきなり6倍の通知が来て…
――訳あり不動産といえば、空き家も大きなウェイトを占めますね。現時点でおよそ900万軒もあるそうですが、こうした物件の相談も多いのでしょうか? 丸岡:空き家は、年々増える一方で、2040年頃には2000万軒ぐらいになると言われています。人口は減り続けるのに、空き家は増えていくのは、日本が抱える大きな課題の一つだと思います。 一例として、私の知り合いのNさんが、両親が亡くなって10年ほど空き家にしていた実家のことで相談に来られました。維持費は、固定資産税が年間数万円程度なので、そのまま放置していたのですね。 ところがある日、固定資産税の通知書が来て、それには税が6倍になると記されていてびっくり仰天し、駆け込んできたのです。 私は、まだ6倍になると確定してはいないと伝え、役所に相談する、空き家バンクに登録する、建物を解体し土地も売却するといった選択肢があることを伝え、落ち着いて調べるようアドバイスしました。
空き家のせいで周辺の不動産の価値も下がる
――私も、長く人の住んでいない空き家物件に関わりがあり、固定資産税6倍とは、個人的に捨て置けない話です……。 丸岡:固定資産税というのは、更地のままだと高いのです。ですが、そこに人が住むための建物があることで課税額が6分の1に下がるのです。以前は、空き家であっても6分の1で据え置きだったのが、空き家問題が深刻化したことで法が改正され、更地同様の扱いになることがあるわけです。 放置された空き家の何が問題かと言いますと、例えば、そこが犯罪の拠点になる、放火される、ごみが投棄される、雑草がはびこる、悪臭が発生するなどして、近隣住民が大きな迷惑をこうむるのですね。 また、空き家が近くにあるだけで、周囲の家の価値が下がることがあります。おとなりが草ぼうぼうの空き家だったら、そこに住みたいかと思ったら、躊躇なさるはずです。それで、周辺の不動産の価値が下がるということにつながってしまいます。国もそれを憂慮して、問題のある空き家を自治体が指定し、固定資産税のペナルティを課せるようにしたのです。