スバルらしさとは水平対向エンジン? 新戦略シャシーに見る将来
スバルは3月7日、新世代プラットフォームとして、SUBARU GLOBAL PLATFORM(スバルグローバルプラットフォーム)」の概要を発表した。 【画像】ポルシェ911の何がスゴイのか? 50年間変わらぬ「形」と「RR」 この新世代プラットフォームは、ここ最近の自動車業界のトレンドを遺漏なく取り込んだものになっている。具体的に書けば、衝突安全性能の向上とスケーラブル化(車両サイズ変更対応設計)だ。
安全性の向上
衝突安全に関しては、長い鋼材をできる限りひと繋がりに使う構造に転換している。これは衝突時の衝撃の応力を接合部に集中させず、鋼材伝いに上手に分散させる効果を狙ったもので、キャビンの生存空間をより堅牢に維持しながら、従来比で軽量なシャシーに仕立てる手法だ。 ボディ裏側から見るとその構造がはっきりとわかる。鋼材の接続部の鋭角な継ぎ手が減り、全体的に緩やかな曲線を描き、環状構造になっている。
側面構造を見てわかる通り、近年のモジュールシャシーの鉄則としてトーボード(エンジン側隔壁)を強固に立体造形し、そこを基準にシャシーをくみ上げて行く方式である。側面衝突時には、頑丈なトーボードが変形に対抗し、フロントサスペンション付け根から後方に斜めに外側に広がるメインフレームを最終防衛ラインとして、外側を走るサイドシルが変形しつつ衝撃を吸収する構造になっている。 側面衝突に関しては、どうしても重いクルマが不利になる。軽ければ、慣性質量が小さいため、クルマが動くことで衝撃を受け流すことができるが、重い場合はシャシーの変形で衝撃を吸収する以外に方法がない。レガシィ級になると、この衝撃吸収構造が生存率を分けることになるのだ。
斜め上からの構造を見ると、ちょうどヘッドランプの裏側辺りに、フロントフェンダー部からラジエターのコアサポートへ向けて湾曲しながら通る構造材がある。これは微小ラップ衝突(25%オフセット衝突)に対する対応だ。 スバルに限らず従来のシャシーは、エンジンの両側を走るメインフレームの外側には前面衝突に対する構造材がない。構造材的に見ればそこはシャシーの外側で、タイヤとサスペンションのための空間だった。微小ラップ衝突は電柱などに対してその部分から衝突した場合を想定したもの。想定していない衝突なので、クラッシャブルゾーンなしで、いきなりキャビンがぶつかることになる。タイヤとホイールは強度が高いため、これがキャビンへ侵入して運転者の脚部が損傷し易い。これに対してスバルの新世代プラットフォームでは最前面に構造材を入れてクルマ全体を斜めに逃がす策が取られている。 全体としては、鋼板を加熱して成型するホットプレスの採用などにより、従来より硬度の高い抗張力鋼板の採用範囲を拡大し、スバルの発表によれば、衝突エネルギー吸収率を従来比で1.4倍に高めたと言う。 ご存じの通り、現在のスバルブランドにとって、アイサイトに代表される安全性能は大きな訴求ポイントのひとつであり、シャシーの刷新による受動安全性能の向上は、この価値の向上に寄与するだろう。