スバルらしさとは水平対向エンジン? 新戦略シャシーに見る将来
走りと生産性の向上
走りの向上はどうなっているのかもスバルファンには気になる所だろう。 スバルは、この新世代プラットフォームについて、従来比1.7から2倍という剛性の向上をうたっている。剛性が向上したことで、「まっすぐ走れる」「不快な振動騒音がない」「快適な乗り心地」という3つの性能向上を達成したという。シャシー剛性が上がれば、タイヤの位置決め能力が上がり、直進安定性が上がる。共振などが起こりにくくなって振動騒音にも有利。サスペンション支持部の想定外の歪みが低減すれば、アームやダンパーの動きがよりスムーズになって乗り心地が向上する。「走り」を売りにしてきたスバルにとってこのポテンシャル向上は重要な位置づけにあるはずだ。 またこのシャシーは将来的な発展性が織り込まれており、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車への展開が可能な構造になっている。 スケーラブル化に関してはこのシャシーによって、インプレッサから、レガシィまで全てのシャシーが基本設計を共用化されることになる。特に製造面では、モジュール設計のメリットを活かしてひとつのラインで複数車種を生産する「ブリッジ生産(混合品種組み立てライン)」がより有利になった。スバルにとって焦眉の急は販売台数の急増に対して生産キャパシティが不足している点だ。ブリッジ生産が効率化されれば、現有の生産拠点で需要に応じた生産に臨機応変に対応することが可能になり、生産拠点の拡大というリスクを取らずに、生産台数の拡大が可能になる。これはスバルの利益率を向上させるだろう。
2020年に向けたビジョン
さて、この新世代プラットフォームが示唆するスバルの将来はどういうものになるだろうか? まず前提としてはっきりさせておかなくてはならないのはスバルがどういう企業を目指しているのかだ。これについてはスバル自身の言葉で定義されている。それは「大きくはないが、強い特徴を持ち、質の高い企業」というビジョンである。具体的には販売台数を110万台以上というラインで、スバルらしく、顧客との高い信頼関係を構築し、ブランド力と利益率を高めていくことを目指している。 規模の拡大を目指さないということには、筆者も賛成である。ブランド力と利益率を高めることはそのためにも必須だろう。台数に限りがあるということは高付加価値化の方向にしか出口はない。薄利多売の反対だ。 「だからスバルらしく」。それはその通りなのだが、ではスバルらしさとはどういうことなのか? そこに不安を感じる。スバルのイメージの根幹を成すのは高い技術力で構築される走りの良いクルマということになると思う。二次的にはそれにアイサイトに代表される安全性能が加わることになるだろう。