新WBA王者・堤聖也 WBC王者・中谷潤人との統一戦は「流れが来たら断ることはないかな」
13、14日の2日間で8つのタイトル戦が行われたボクシング「PRIME VIDEO BOXING 10」の一夜&二夜明け記者会見が15日、都内のホテルで開かれ、初日にWBO世界ライトフライ級王座を獲得した岩田翔吉(帝拳)、WBA世界バンタム級王座を奪取した堤聖也(角海老宝石)、2日目にWBC世界同級王座を防衛した中谷潤人(M・T)らが出席した。 ◇ ◇ 高校2年時のインターハイ準決勝で敗れた拓真に12年の時を経てリベベンジした堤は「やっぱり井上拓真選手に勝てたその事実がすごくうれしい。何回も何回も思い返しています」と、二夜明けても感慨深げ。 12ラウンドを戦ったのは初めてで「やる前から自分のイメージとして、1ラウンド目から12ラウンド目のつもりで戦おうと最初で思っていた、そう戦わないとダメだと思って。すごくハードル高いけど、それは体現できたかなと思います。最初から、最後のつもりで全てのラウンドを全力で戦いました」と振り返った。 拓真については「ディフェンス能力、よける技術がすごいなと。上が当たんないからすぐ下に切り替えたけど、ボディーも当てさせてくれないから。頭だけじゃなくおなかまで動いてくるから、当たんないじゃんと。どうしよう、どうしようと。それぐらいディフェンス能力が高かった。体をひっつけるのがうまいので、(パンチを)出せなくなる」と称賛した。 一方で「スピードは速かったけど許容内。当たったパンチも見えていたので」とし、「やった時は。石原(雄太トレーナー)さんに手数少ないと言われてたので、まだ足りないんだ、まだ足りないんだと思いながら戦ってましたね」と、試合中の心中を語った。 石原氏は「本人の日々の努力とスタミナが出て、本当によくやってくれた」と堤をたたえた。 今後について、堤は「正直、1個のゴールとしてこの試合を見ていたので。今はまだそんなに考えていない」と、自身にとっての拓真戦の重みをにじませつつも、「変なことをやるつもりはない」と王者の自覚ものぞかせた。 戦前は中谷と拓真が統一戦に向けてラブコールを送り合っていたが、堤の勝利で情勢が一変。堤は中谷との統一戦について「彼の強さは知ってるし、彼が拓真選手とやりたがっていたので、僕がチャンピオンになって僕にどういう評価を持ってるのか。それでやりたいというなら断ることはない」と述べた。 「僕は何度も彼とスパーリングして、けっこうやられてる。勝ち筋や勝率は現段階で限りなくゼロに近いけど、スパーリングはスパーリング、試合は試合。勝てないと言われた試合で今回も勝ったし。WBCバンタムは絶対に欲しいと思ってるベルトではあるので。戦いたいという強い気持ちがそんなにあるわけじゃないけど、流れが来たら断ることは僕の気持ちとしてはないかな」と前向きだった。 また、自身の特色であるスイッチについて「実際の所は、構えの概念を消したいので、今はオーソドックス、今はサウスポーっていうのをなくしたい。普通に歩きながら移動して、どの位置でも打てるボクシングをしていきたい。それにはすごい時間がかかると思います。いろんな固定概念を消して消して新しいボクシングを作っていきたい」と、堤スタイルの確立に意欲を見せた。 チャンピオンになって、自分への買い物について聞かれると「普通に古着の話しちゃっていいんですか?」と柔和な笑顔に。「リーバイスの501XXの革パッチ、濃紺のやつがあると聞いてたので。カネ云々じゃないですけど、普通に数百(万円)だったり、1千万超えたりするのもある。今、僕が狙ってるのは、値段は知らないので、3ケタはいくんじゃないかなぐらいで。あまりお金のことは気にしない」と冗舌だった。 ◇ ◇ 中谷は試合を「サウスポーに対して練習してきたことが、しっかり出たかなと思います。サウスポーなので、アジャストする時間がかかった。勉強する時間が取れたので、コントロールしながらやっていけたと思います」と振り返った。 今後については、統一戦でラブコールを送り合っていた拓真が堤に敗れたが、「統一戦をもちろん目標にしていますし、いい形で試合を終えられて良かった」と、統一戦狙いは変わらず。堤が中谷を強すぎると評していたことを聞くと「ありがとうございますという気持ちでいっぱいです」と笑みがこぼれた。 来年、バンタム級に階級を上げてくるとみられているWBC世界スーパーフライ級王者のジェシー・ロドリゲスとの対戦について聞かれると「すごくタレント性があって、いいキャリアを歩んでる選手なので。目にする機会も多いし、刺激をもらってる一人の選手なので、そういったところで戦ってみたいなという気持ちはあります」と前向きに答えたが、階級アップを「待つまではいかないかもしれない」とニッコリ。「ホントにタイミングだと思うので、一緒になったらやるかもしれないし」とした。 ◇ ◇ 1年11カ月ぶり2度目の世界戦で3回TKO勝ちし、悲願の世界王者となった岩田は、試合を「ホントに自分がやろうと思ってたことがしっかりハマったというか、1、2ラウンドは左で自分がフィニッシュにまでもっていくために、いろいろと組み立てができたので。相手が焦ってガンガン前に来たところを、前傾姿勢になってるなと思ったので、そこで右アッパーを当ててというイメージ通りでした」と振り返った。 試合後は来場した世界的なスーパースター、サウロ・カネロ・アルバレスと記念撮影。「ホントにスーパースターなので、ちょっと怖い雰囲気なのかなと思ったけど、すごく紳士的に写真を撮っていただいて、コングラチュレーションと言ってもらってうれしかった」と喜び、いつか米国で同じ興行に出場したいかと水を向けられると「そうですね、はい、思います」と笑顔を見せた。 世界王者を初めて育てた元世界2階級王者・粟生隆寛トレーナーは「世界チャンピオンに僕の担当してる選手がなったのはすごくうれしい」と喜び、「(相手のハイロ ノリエガは)運動量が多い選手なので、自由に動かさせず、プレスをかけて自分から試合作っていくようにずっと言っていた。遂行できてああいう形になったので、合格点をあげたい」と岩田をたたえた。 この2日間は岩田を含め95年組が5人出場し、初日は拓真が堤に敗れ、阿久井が防衛。2日目はWBO世界スーパーフライ級王者・田中恒成がプフレレ・カフに敗れて王座陥落した。岩田は「拓真の試合もすごく近くで見ましたし、恒成の試合も見たんですけど、かなり拮抗(きっこう)した試合で、ボクシングは勝者と敗者がいるので、ああいう結果になることもあるなと思うので、自分も次すごく気を引き締めないといけない」と厳しい表情に。 今後については「この階級で防衛戦だったり統一戦をやっていきたい。軽量級ですけど迫力のある、自分がいちファンとして試合を見る時はパワフルで一発のある選手を見るのが子供の頃から好きだったので、そういったボクシングをやっていって、一発で相手を倒せるようなチャンピオンになっていきたい」と抱負。試合後は新IBF王者・矢吹正道との統一戦をアピールしていたが、この日も「実現したら必ずKO決着になると思うし、何よりファンが望んでいると感じているんで、やりたい」と改めて対戦を望んでいた。