日本で独自に進化した手品の歴史を種明かし…「奇術大事典」3部作が完結「若いマジシャンも読んで」
マジシャンでつくる日本奇術協会の名誉会員で、元短大教授の河合勝さん(79)(愛知県江南市)が、日本で独自に進化した奇術(手品)に関する書籍についてまとめた「日本奇術文献大事典」(東京堂出版)を刊行した。江戸時代以降のタネ明かし本や入門書など約3400点を網羅した大作。河合さんは過去に2冊の事典を出版しており、3部作が「日本の奇術研究に役立てばうれしい」と話す。
江戸以降の文献3400点を網羅
河合さんは中学時代、友人のカードマジックに魅了されて手品のとりこになり、手品の国際大会にも出場した。勤務していた愛知江南短大では、学生への幼児教育の講義に、ハンカチやロープを使った手品を取り入れてきた。
奇術関連の書籍の収集を始めたのは1985年。カルチャーセンターで手品を教えるようになり、「奇術の歴史を知り、知識を深めることが必要」と考えた。江戸時代の奇術書に触れ生き生きとした描写の挿絵にひかれ、古書店約500店に手紙で問い合わせるなどして、約40年間で約5000点の資料を集めたという。
2008年に短大を退職後、事典作成に本格的に取り組んだ。1000種以上の奇術の演じ方や仕掛けを自分なりに解説する「日本奇術演目大事典」を21年に出版。23年には、江戸時代以降に行われたマジックショーのチラシやプログラムを集めた「日本奇術資料大事典」を出した。
集大成となる「日本奇術文献大事典」は928ページで、3万6000円(税別)。1696年に刊行された国内最古の奇術書といわれる「神仙戯術(しんせんげじゅつ)」をはじめ、奇術に関する書籍の表紙や中身の一部を時代ごとに紹介。解説文をわかりやすくし、裏付けのない推測や伝聞は書かないようにしたという。
河合さんは「3冊が奇術史研究の基盤となり、研究者が増えればうれしい。奇術の新しいタネ、アイデアが生まれるきっかけにもなると思うので、若いマジシャンにも読んでもらいたい」と話している。