PM2.5、甘味や酸味、消費者の嗜好......「データ」が紡ぐサステナブルな未来
「サステナビリティの追求」が世界共通のテーマとなっている今日、「データ」が環境問題を把握、監視、解決するための重要なツールとして浮上しています。二酸化炭素排出量の追跡、資源利用の最適化、サステナブルな農業の実践など、データ主導のアプローチは計り知れない可能性を秘めています。しかし、サステナビリティのためのデータ活用には依然として様々な課題も残っています。今回は事例研究を通して、サステナビリティのためのデータ活用における進捗状況、それに伴う展望や課題を探ります。
事例1:大気汚染モニタリング
スペイン バルセロナ市、中国 北京市 リアルタイムで大気汚染の監視・管理をするためにスマートテクノロジーを導入する都市が増えています。その一例として、スペインのバルセロナ市ではセンサーネットワークを構築し、大気汚染レベルに関するリアルタイムデータを収集しています。このデータを分析することにより汚染ホットスポットを特定し、大気の質を改善するための的を絞った介入策を打ち出すことができました。同様に、中国の北京市でも衛星データと地上センサーを活用して大気汚染レベルを追跡し、排出規制を強化するモニタリングシステムを導入しています。 進捗状況:リアルタイムモニタリングのおかげで、バルセロナ市や北京市では大気汚染の緩和に向けた迅速な行動が可能となり、公衆衛生や生活の質の目に見える改善に繋がりました。 課題:センサー技術の進歩にもかかわらず、データの正確性と信頼性の確保が依然として両都市の課題となっています。さらに、特にスペインや中国のような規制の厳しい国では、個人情報などの機微情報の収集に伴う倫理的問題もあり、データプライバシーとセキュリティが懸念されています。 展望:交通量や気象条件などのさまざまなデータも組み込むことで、都市の大気質の動態をより包括的に把握できるようになります。さらに、人工知能や機械学習アルゴリズムを活用すれば、バルセロナや北京のような都市の大気質監視システムの予測精度を高めることができます。 日本の事例としては、2017年韓国、中国とともに各国内のPM2.5濃度について、各国の主要都市における、日中韓の発生源からの寄与度合いを3か国それぞれのシミュレーションモデルを用いて推定したデータ活用事例があります。3か国の結果を平均すると、いずれの国においても、各国都市平均のPM2.5濃度はそれぞれ自国の国内発生源由来の寄与が最大となっていました(中国、韓国、日本それぞれについて、国内発生源由来の寄与率はそれぞれ91.0%、51.2%、55.4%)。 ・中国 中国由来91.0%、韓国由来1.9%、日本由来0.8% ・韓国 中国由来32.1%、韓国由来51.2%、日本由来1.5% ・日本 中国由来24.6%、韓国由来8.2%、日本由来55.4% 注)日中韓以外の地域からの寄与もあるため、合計は100%にはならない。 3か国のそれぞれのPM2.5濃度の推定値は各々の国内発生源由来のものが最大、という結果から、各国内の発生源対策が北東アジア地域の大気環境改善に重要であることが示唆され、それぞれが国内への対策に注力していくことが重要であるとの仮説が考えられるようになりました。(※1) ※1:環境省「北東アジアにおける大気汚染物質の長距離輸送プロジェクト第4期(2013~2017年)サマリレポート」 日本の環境省大気汚染物質広域監視システム https://www.env.go.jp/press/107451.html