岩井千怜が「樋口久子 三菱電機レディス」優勝 ツインズの異なる攻めから学ぶ状況判断と戦略、最終ホールで見せた
【勝者のワザ】 最終日の優勝争い。2打差を追う姉・明愛は18番パー5ホールの第2打でドライバーを抜き出して果敢に2オンを狙った。イーグル奪取なら、一気に最終組のトーナメントリーダーである妹・千怜に並べる。直ドラで勝負をかけたのだった。 【写真】「フジサンケイレディス」恒例の前夜祭、華やかな衣装で出席した岩井千怜ら 見事に2オンも明愛のイーグルはならず、2パットのバーディーで、この時点で1打差で最終組の千怜の結果を待つことになった。千怜は、ドライバーショットをフェアウエー中央のベストポジションに打ち出した。先にホールアウトした明愛とほぼ同じ位置。こちらは冷静に3Wでグリーン手前の好位置にボールを止めた。そして、アプローチショットを右横につけた。2パットのパーでも優勝という安全策をとったのだった。もし千怜も追いかける立場だったら明愛と同じ直ドラ作戦を敢行したのではあるまいか。追うものと逃げるものの違いが分けた異なる戦略であった。 アマチュアゴルファーの場合、競技ゴルフであっても、これほど極端な違いにはならないかもしれない。それでも、万が一のケースになることを想定して、練習しておくのも、ゴルフの楽しみを広げることになりそうだ。 直ドラは、ティーアップせずにボールをマットの上に置いて打つ。ハーフトップで低いライナー性のあたりになっても、着地してからどんどん転がって距離を稼げる。向かい風に負けず、予想以上の距離を得られるから実際のラウンドでも応用できる技術が身についていく。 逆にFWは高めにティーアップしたボールをジャストミートさせてクリーンにヒットさせるようにする。ラフにボールが浮いている状態でもダフリ、テンプラのミスを防ぎ、FWに求める弾道のショットを打ち出す精度の高さが身についていく。 練習場でのボール打ちの際には、常に同じ状態にしたボールを打つのではなく、ティーの高さやボール位置を少しずつ変えながら打つことで、いろいろと気づくことがある。それを実践に引き出すことで戦略も広い選択肢から最適な方法を導き出すことができるようになる。岩井ツインズの異なる攻めは、そうした日々の幅広く、奥深い練習がうかがえる。 ■岩井千怜(いわい・ちさと) 2002年7月5日生まれ、埼玉県比企郡出身。父雄士さんの影響で8歳からゴルフを始める。埼玉栄高から武蔵丘短大に進み、最終プロテストに双子の姉明愛(あきえ)とともに一発合格。双子での合格は4組目。22年「NEC軽井沢72」でツアー初優勝。翌週の「CAT Ladies」も制し、初優勝2週連続Vは史上3人目の快挙。23年に2勝。24年は3勝目で通算7勝。162センチ。