選挙の情報発信に関する主な違法行為の例

27日投開票の衆院選を巡り、ネット選挙解禁で欠かせない選挙ツールとなった交流サイト（SNS）で、候補者に関する偽情報や誤情報が出回り始めている。政府は今月、偽情報対応をIT事業者らに初めて要請するなど警戒を強めている。ただ、過度な規制は選挙活動への干渉や表現の自由の侵害にあたる可能性もあり、対応は一筋縄ではいかなそうだ。 「事実に基づかない荒唐無稽な偽情報の流布もあります」 ある衆院選候補は衆院選公示前の12日、自身のSNSなどに声明を出した。親の勤務先などについて誤った情報が拡散されているという。 衆院選と同じ27日に行われる最高裁判事の「国民審査」でも誤情報は見られる。SNS上では「〇×を付ける」とする投稿もあるが、実際は「×」以外を記入すれば無効になってしまう。 7月の都知事選でも候補者の加工された画像がSNS上で出回るなど、選挙でのSNSの不正利用は今回の衆院選だけの現象ではない。 総務省は今月11日付で、X（旧ツイッター）やオープンAIなどのIT事業者ら14社に選挙へのAIの悪用防止や偽情報への対応を初めて要請。ホームページでも偽情報を拡散した場合などに刑事罰に問われる事例を発信するなど、有権者への啓発を進めている。 公選法では、候補者を当選させないために候補者に関する虚偽情報を流すことや、他人になりすまして情報発信することを禁止。候補者の名誉を傷つけたり、侮辱したりした場合も刑事責任を問われる可能性がある。 ただ、過度な取り締まりは表現の自由の侵害や、選挙活動への干渉と捉えられる可能性もあり、政府の対応は抑制的にとどまらざるを得ない現状がある。今回の選挙では、有権者による情報の取捨選択がこれまで以上に求められそうだ。（宮野佳幸） ■米大統領選でも蔓延　「分断あおる」当局が注意喚起 一方、11月5日の米大統領選を前にした米国では、SNSで拡散する偽情報に関する報告が相次いでいる。社会の分断をあおる懸念があるとして、米当局はSNSの情報に接する際は注意するよう国民に呼びかけている。 今年8月、民主党候補のハリス副大統領（60）を共産主義者だと印象付けようとする偽画像がSNSで拡散された。ハリス氏に似た後ろ姿の女性が共産主義の象徴「鎌と槌」の旗や聴衆の前で演説する偽画像で、8月19～22日に民主党大会が開かれた米中西部シカゴの地名も入っている。共和党候補のトランプ前大統領（78）が8月18日、自身のX（旧ツイッター）に投稿し、閲覧回数は8000万回を超えた。