連載20年&400回超え! ホラー?ギャグ? 漫画『彼岸島』が向かう場所を作者・松本光司氏に聞く
唯一無二の世界観…作者はいったいどんな人なのか
『鬼滅の刃』といえば刀、『ONE PIECE』といえば麦わら、『名探偵コナン』といえばメガネと蝶ネクタイといった具合に、キャラクターを抜きにしたアイテム単体で作品を連想させてしまう漫画は時々ある。 【漫画】今から22年前! ここから歴史は始まった…『彼岸島』(第一話) では、「丸太」といえば……? 『彼岸島』と即答する人は案外多いのではないか。 『彼岸島』とは、『週刊ヤングマガジン』で’02年より連載されている松本光司氏のホラー漫画。タイトルでもある『彼岸島』を舞台に、主人公・宮本明と篤の兄弟がマスターヴァンパイア・雅率いる吸血鬼勢力と繰り広げる戦いを描く作品だ。 ’10年からは『彼岸島 最後の47日間』が、さらに’14年からは舞台を本土・東京に移し、『彼岸島 48日後…』として、’24年の現在まで続いている。 ちなみに、「丸太」は、ネットでネタ化している戦場に赴く時の有名なセリフ「みんな丸太は持ったな!!」をはじめ、片手で振り回したり、つかまったり、軽トラの先端に尖らせてくくりつけたりと度々登場する、『彼岸島』を象徴する便利かつ最強のアイテムである。 「丸太」の他にも、手書き文字の「ハァハァ」、丸メガネ+マスク+パーカー姿の兄・篤など、一見して『彼岸島』と分かる記号は多数ある。 なぜこんなにも独自路線で、キャラが立ちまくっているのか。グロテスクなホラーでありつつ、ギャグともいわれる摩訶不思議な世界観ながら、なぜ開始から20年超も続く長期連載になったのか。作者はいったいどんな人なのか。 作者・松本光司氏にインタビューを決行したところ、素顔は意外なほどに正直でピュアでチャーミングな方だった。 ◆「10巻ぐらいいけばいいかなぐらい」……『彼岸島』誕生秘話 「もともと前の話(『クーデタークラブ』)が終わった時、アシスタントにゾンビ映画好きの人がいて、ずっとゾンビの話をしていたので、そんな感じのものが描きたいなと思っていました」と松本光司氏は『彼岸島』の原点について語る。 とはいえ、壮大な物語を思い描いていたわけではなく、「長期連載になるとは夢にも思っていなかった」「10巻ぐらい出ればありがたい」のノリだったと言う。 初回から強烈なインパクトを与える絵と内容だったが、実は最初はあまり人気がなく、反響が耳に届き始めたのは、「彼岸島に行って兄・篤が出てきたくらいから」(松本氏 以下同)。 主人公の兄・篤は、本作の最強キャラであり、シンボル的存在でもある。先述の通り、丸メガネ+マスク+パーカー姿も特徴的だが……。 「僕はあまり考えずに描いたんですよ。単行本になった最初の作品『サオリ』にちょっと出てきた格好を、せっかくだからちゃんと使いたいな、とほぼそのまま登場させました。お兄ちゃんという設定にしたのも、僕自身に兄貴がいるので、兄貴という存在が描きやすいと思ったからです」