「花子ロス」の声も…能面をつけて生活する”謎の女子高生”が誕生したワケ
家庭の事情で「能面」をつけて生活をする女子高生・花子さんを主人公に描いた、織田涼さんの大人気漫画『能面女子の花子さん』(BE・LOVE/講談社)。学園コメディでありながらも能面についても学べると話題の本作は、2023年に全9巻で完結。SNS上では“花子ロス”に陥る人も続出した。 【漫画を読む】ちょっと不気味?能面をつけて毎日生活する「能面女子」って一体何者? そもそもなぜ能面? 花子さんはどんな顔をしているの? 素顔が見えない人物を主人公に描いたワケは? 実際に読んでみると気になることがたくさん溢れてくる本作は一体どのようなきっかけで生まれたのだろうか。改めて著者の織田さんにお話を伺った。試し読みとともにお届けする。 マンガ/織田涼 文/FRaU編集部
「なんだあれ!!?」謎の“能面女子”現る!
▼あらすじ 多くは無表情の代名詞とされるが 能舞台では人の多種多様な感情を表現し 人々を魅了してやまないーーそんな歴史ある「能面」を家庭の事情から毎日つけて生活する女子高生・泉花子さん。ある日、学校の入学式で、新入生の挨拶のためにステージに上がると、 「なんだあれ!!?」 能面をつけた花子さんの姿に、学校中の生徒たちが仰天……。 入学式後、「能面」に対するイメージもあってか、素顔の見えない花子さんに緊張し、クラス中が静まり返った空間に……。 「まぁいいわ 先生来る前にトイレ行きましょ」 席を外した花子さんだったが、教室の前に戻ってくると「誰か同中のひといないの? あの能面女子と」と噂する声が聞こえてきて……? これから花子さんの学園生活はどうなってしまうのか!? ある日突然、自分のクラスメイトに“能面女子”が現れたら…… まずなんて声をかけようか? 能面の奥ではどんな表情をしているのだろう?といろいろ考えてしまいそうだが、そもそもなぜ「能面」? 本作が生まれたきっかけやエピソードについて、著者の織田さんに伺ってみた。 ーー日頃から能面をつけて生活する、“素顔が見えない女子”を主人公にしようと考えたのはそもそもなぜなのでしょうか? 本作が生まれたきっかけを教えてください。 はじめから“素顔が見えない主人公を描こう”と思ったわけではありません。元々投稿作だった拙作ですが、作品を書くにあたって「日本文化をテーマに人の目をひく題材で漫画を描きたい」と考え、ネタ探しに様々なワークショップ等を通っている中で能面と出会いました。 能面はビジュアルとしては目立ちますが、現代の日本社会において能面の本来の意味や能面を扱う芸能「能楽」に馴染みが薄いのが現状です。どうやって能面の本来の意味を生かし、かつ読みやすい漫画にするかを考えた結果、学園モノ×能面=女子高生が能面をかける「花子」が生まれました。 ーー仮面やマスク、ではなく「能面」を選んだ理由はなんでしょうか? インパクトがあり、かつ認知度が高いのは伝統的な仮面の中でも「能面」の「小面」(花子がかけている面)だと思ったからです。 ーー1巻のあとがきにて、「能面を知ったのも『花子さん』を描き始めたのがきっかけ」とありますが、もともと「能面」に関してどのようなイメージをお持ちでしたか? 「なんか不気味」「ホラーとかサスペンスに出てくる」「無表情」 おそらく皆さんが抱いている「能面」のイメージと同じかと思います。そもそも能楽と歌舞伎と狂言等日本の舞台芸術の違いも全く知りませんでした。 ーー本作を描くにあたって、担当編集者とどのような話をしながら描いていかれたのでしょうか? この作品を描くまでコメディを描いたことがなかったうえに、取材をしていくうちに 能面が好きになって「コメディにして本当におもしろいのか?」「面をこんな風に 扱って大丈夫なのか?」と北山先生(花子の担任の先生)状態の私VS「“能面”の題材おもしろい! コメディとしてどんどん描いていこう!」と『能面女子の花子さん』に可能性を見出して能面におもしろいことさせたい担当編集者とでよくバトルをしていました。 ーー作品を読んだ読者からはどのような声を頂きましたか? 本作品には男女年齢問わず様々な方からご感想をいただきました。それぞれ感想は違うのですが、“能面のインパクトすごい”はみなさん感じていらっしゃったようです。あとは花子のキャラクターや何事にも臆さない性格、花子と香穂(花子のクラスメート)が普通の仲のいい友達なところが微笑ましい、とのご感想もいただきました。 ーー本作を通してどんなことを読者に伝えたいですか? メッセージがあればぜひ教えてください。 “伝えたい”と思うことはそう多くありません。楽しく読んでくだされば、8年間(投稿期間を含めると約10年)描いてきた私も報われます。あるとすれば、“無表情”の代名詞でもある能面に少しでも表情を感じてもらえたら嬉しいです。 2023年に全9巻で完結した本作、SNS上では 「のほほんとしたボケと、大人っぽさと、常識を知っているけどあえて外れた人生を選択しているようなキャラで、とても良かった」「完結か~読み終わるの淋しいな……」といった読者の声が寄せられており、なかには本作の影響で「能面」に興味を持ったという人も……! この機に、コメディとして楽しみながら能面についても学べる『能面女子の花子さん』、ぜひ読んでみてはいかがだろうか。
織田 涼、FRaU マンガ部