日銀国債買い入れ減額の具体策を展望する
国債買い入れ減額が長期金利に与える影響は大きくない
このような形で、7月にも日本銀行が国債買い入れの減額を始めると、長期金利にはどのような影響は及ぶのだろうか。不確実性はあるが、長期金利は大きな影響を受けないのではないかと考えられる。 日本銀行は2013年に、「量的・質的金融緩和」の枠組みのもとで大量の国債買い入れを始めたが、それによって(実質)長期金利は大きくは下がらなかった。その政策を始めた時には、既に長期金利が下がる余地はあまり残されていなかったと言えるだろう。日本銀行は、国債買い入れによって長期金利は1%程度押し下げられたと説明しているが、実際にはもっと小さいと思われる。 日本銀行は銀行から国債を買入れるのと交換にマネー(日銀当座預金)を供給したが、金利の水準が十分に低いと、マネーを供給しても金利が下がらずに経済効果も発揮されない、いわゆる「流動性の罠」の状態に、既に陥っていたと考えられる。そのため、今度は逆に国債買い入れを減額してマネーの供給を減らしても、長期金利はあまり上がらないと考えられる。 この先、長期金利に影響を与え、それが落ち着く均衡水準がどこになるかを主に決めるのは、量的引き締めの進め方ではなく、短期金利がどこまで引き上げられるか、ではないか。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英