犬スポット訪問記(3)「群馬県・犬塚峠」“イヌゾー”と日本酒と
最初は自分の犬だけがかわいいと思う人も、やがてその犬種全般を愛するようになり、最後には犬に関係するものはなんでも好きになる。愛犬家にも色々あるが、これが僕の持論である。この「犬ならなんでも好き」な第三段階になると、「犬目」とか「犬帰りの淵」、あるいは「犬ころの滝」などという地名を地図やナビで見つけると、迷わず立ち寄ってしまう。何か犬に関係のある謂われがあるのだろうと思うと、実際にどんな場所か確かめたくなるのだ。 【写真】犬スポット訪問記(1)「木曽・犬帰りの淵」犬は本当に帰ったか? 少し検索するだけで「犬」がつく地名はいくつも出てくる。滝の名前などの固有名詞を含めれば全国に数えきれないほどあるようだ。その中から、出張や旅の途中でたまたま立ち寄った5つの「犬スポット」を紹介しよう。(内村コースケ/フォトジャーナリスト)
清酒『犬の恩返し~犬塚峠』
バカバカしいことが好きな学生時代からの友人と、『イヌゾー探検隊』というチームを組んでいる。全国のイヌゾー=犬の像(銅像・石像)を訪ね歩き、由来やサイドストーリーを調べてあらゆるアングルから写真を撮るユルくも真面目な活動だ。この群馬県長野原町の「犬塚峠」にあるイヌゾーを初めて訪ねたのは、2009年の9月の事である。 この『イヌゾー探検隊』、犬雑誌に連載を持っていた時期もあるのだが、犬塚峠のイヌゾーは、未掲載のままお蔵入りしていた。そのまま3年、4年と経つうちに、犬塚峠自体が記憶の彼方に消えかけていたのだが、ちょうど訪問から5年目のある日、なんとはなしに台所のシンク下から日本酒を2瓶発掘した。その名も『犬の恩返し~犬塚峠』という、純米吟醸と本醸造の2種類。「ああ、あの時の!」と、イヌゾーの存在と共に記憶が蘇った。この2本は、2009年の初訪問時に、イヌゾーの目の前の酒屋さんで記念に買ったものだったのだ。
その当時、僕はヘビースモーカーからの禁煙2年目で、まだやり場のなさから来る「禁煙鬱」に苦しんでいた。一方、お酒の方はつい最近まで体質的にほとんど飲めなかった。中でも日本酒は文字通りの“頭痛の種”で、飲むとすぐに割れるように頭が痛くなってしまう。だから、この『犬の恩返し~犬塚峠』を発掘した時も、最初は古いし飲まずに捨ててしまおうかとも思った。でも、まあ念のためにと、フェイスブックで聞くと、皆5年くらいは大丈夫だから飲めと言う。そんなもんかなあと、半信半疑でちょびっと常温で飲んでみると、なぜだかこれがめちゃめちゃ旨い! 発酵した米の甘い香りと言えばいいのか、鼻腔と舌で「豊潤」という言葉を初めて実感した……というようなグルメレポート的な感想が思わず出てしまうほどであった。