AI事業者ガイドラインとは何か? 経産省と総務省謹製「日の丸AI」基準の書
AI事業者ガイドラインの構成と対象範囲
「AI事業者ガイドライン」は、本編と別添(付属資料)から構成されている。 本編では、事業者がAIの安全安心な活用を行い、AIの便益を最大化するために重要な「どのような社会を目指すのか(基本理念=why)」「どのような取り組みを行うか(指針=what)」から構成されている。 別添では、「具体的にどのようなアプローチで取り組むか(実践=how)」を示すことで、事業者の具体的な行動へとつなげることを想定している。 本ガイドラインの対象範囲は、広島AIプロセスでまとめられた高度なAIシステムに関する国際指針や国際行動規範を反映し、一般的なAIを含むAIシステム・サービスなども含め広範囲にわたる。 AI開発者やAI提供者、AI利用者は、本ガイドラインを参照し、各事業者が指針順守のために適切なAIガバナンスを構築し、具体的な取り組みを自主的に進めることが重要としている。
AI事業者ガイドライン「共通指針7つ」「期待事項3つ」
AI事業者の基本理念は、「人間中心のAI社会原則」に基づき、AIがSociety 5.0の実現に貢献し、地球規模の持続可能性への道を開くことが重要としている。 また、「尊重されるべき人間の尊厳が尊重される社会」「多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会」「持続可能な社会」の3つの価値を「基本理念」として尊重し、その実現を追求する社会を構築していくべき点も挙げている。 各主体に共通の指針では、AIの活用による目指すべき社会の実現のために、各主体が連携して取り組む内容が原則としてまとめられ、「共通の指針」として整理している。
「AIガバナンス」を構築するには?
AIを安全安心に活用していくために、経営層のリーダーシップの下、適切なAIガバナンスを構築することで、リスクをマネジメントしていくことが重要となる。 AIガバナンスにおい、重要になるのが、「アジャイル・ガバナンス」の考え方だ。アジャイル・ガバナンスは、企業、法規制、インフラ、市場、社会規範など、さまざまなガバナンスシステムを包含し、これらをマルチステークホルダーが協力して、継続的かつ迅速に見直し、改善していくプロセスを指す。 具体的には、「環境・リスク分析」「ゴール設定」「システムデザイン」「運用」「評価」というサイクルを柔軟に回し、社会の変化に即応できる体制を整える。これにより、ステークホルダーに対する透明性や説明責任(アカウンタビリティ)を担保する。 そしてAIガバナンスの構築には、複数主体間の連携確保や適切なデータ流通、そして、経営層のコミットメントといった取り組みが重要となる。