雑誌「幼稚園」の付録がリアルすぎて完売間近 遊びながらAED体験できるとは!? 医師と出版社に聞いた
4~6歳の子どもと保護者が対象の幼児誌『幼稚園』10・11月号の付録「おやこで!AEDたいけんセット」に注目が集まっています。見た目が本物のAEDにそっくりなだけでなく、流れる音声もほぼ同じ。なぜなら本物のAEDをつくる医療機器メーカー「日本光電」とのコラボ付録なのです。 【動画】「幼稚園」付録AEDと正規AEDトレーナーを見くらべる 発売後すぐに購入して付録のクオリティーの高さに驚いたのは、「同愛記念病院」(東京都墨田区)の総合診療科部長/救急センター長・池田啓浩医師(@keikouikeda)です。自身のXに本物と付録をならべた画像を投稿したところ、10万を超える「いいね」がつく大反響となりました。 AED(自動体外式除細動器)は、2004年7月に市民による使用が解禁されました。今年は、街中にAEDが設置されるようになってちょうど20年になります。設置場所も増えてきていますが、実際に目の前で心停止した人がいたら、躊躇なくAEDを使えると言える人はまだ少ないのが現状ではないでしょうか。 池田医師は、「救急車で運ばれてくる患者さんは、倒れてから時間がたってしまっていることが多く、すでに電気ショックの適応にならない方が多いと感じています。別図(図1)のように、心肺停止から電気ショックの時間は短ければ短いほど救命率があがり、倒れてから数分が勝負です。ですので、現場にいる方がすぐにAEDを使っていただけることが人の命を救う上で何よりも大事だと思います」とAED使用の重要性を話します。 図を見ると、心停止から1分では生存退院率は85%ほどに対して、9分後では10%程度に下がってしまいます。AEDの使用は早ければ早いほどいいとは知っていましたが、そんなに短い時間だとは! 筆者もAEDの講習会などに参加したことがなく、積極的に使えるとは言えないひとりです。幼稚園児が遊びながら付録をさわることで、AEDの利用につながるのか『幼稚園』の編集担当者さんに聞いてみました。 「AEDの存在を幼少のうちから知っておくこと自体が大切かなと考えております。AEDは大人でも知っている人と知らない人がいたり、中身を実際には見たことがなかったりします。なので、AEDというものがあるという事を知ってもらい、どういう音声が流れるか、どうやって使うのかを、この付録で遊びながら心の片隅にでも置いておいてほしいなと思っております」と、特集の理由を話します。 池田医師も「一般社会人の皆様は、AEDの存在は知っていても、触ったこともない方がほとんどだと思います。いざというときにぶっつけ本番になり、怖くなってうまく使えないのが実情だろうと思います。幼稚園児から(!)楽しく親しんでもらえることは、必ず未来、AEDを抵抗なく使えることに役立つと思います」 さらに「幼稚園児といってもすでに心の中には、誰かの役に立ちたい、人を助けたいという気持ちは大人と変わらず(ひょっとすると大人より)持ち合わせていると思います。そういう気持ちを引き出すことにもつながっているのではと感銘を受けました。小学館『幼稚園』編集の方はいい意味で子ども扱いしていない、本気で向かい合っていることを感じました」と特集を支持しています。 池田医師は、正規の練習機と付録のAEDの動きを動画に撮って投稿しています。見比べてみるとほとんど同じ流れで、音声もほぼ一緒。ただし、付録は自動進行、正規品はリモコン操作とのことです。 「AEDは本当に心臓に異常が起きている人にしか作動せず、普通の人に使っても電気ショックはかからないようになっている優れものです。どなたでも使用OKなので、まずは『使ってみよう!』と思っていただきたいです」 「『幼稚園』には人が倒れた時の初期対応の仕方が漫画でわかりやすく説明してあり、この付録も現場の人間が驚くほど再現度が高いので、幼稚園児に限らずどなたにもお勧めします。そのうち、子どもがAEDを使って大人を助けた、というような事例が出てくるかもしれませんね」(池田医師)