J→海外で勝負できる「日本人ベスト11」 NEXT欧州組候補を厳選…今季ブレイク得点王も有望株【コラム】
J2得点王・小森飛絢の危険性は外国人FWにも負けず劣らず
中盤は田中聡(湘南ベルマーレ)、川﨑颯太(京都サンガF.C.)、宮代大聖(ヴィッセル神戸)の3人を選んだ。田中に関してはベルギーのコルトレイクに期限付き移籍した実績があり、いわばJリーグ出戻りだが、一度はポジションを取りながら定着できなかった苦い経験をJリーグのプレーに生かしている。精神的にも逞しくなった感があり、再チャレンジも可能だろう。川﨑はハードワークのベースが高く、ボールを奪い能力と鋭い攻め上がりを兼ね備えている。守備的MFとしては小柄だが、攻撃ビジョンを生かしてインサイドハーフなどで起用されたら、タフな欧州の環境でも特長を発揮できそうだ。 宮代は天皇杯決勝でのゴールが記憶に新しいが、川崎でトップ昇格した当時から“川崎の大砲”と呼ばれていたとおり、シュートの技術は卓越していた。フィジカル面や勝負強さといったところが課題だったが、期限付き移籍を繰り返しながら逞しくなり、新天地の神戸では大迫や武藤といった欧州の第一線で揉まれてきたビッグネームと過ごすことで、決断したプレーをやり切る意識が高まった感がある。で、久保建英や中村敬斗など、海外で活躍する同世代のアタッカーに遅れを取った向きはあるが、焦らずにベースを作り上げてきての今がある。 2シャドーは多くのタレントがいる中で、小森飛絢(ジェフユナイテッド千葉)と山田新(川崎)を選出した。J2得点王の小森はシュートエリアが広く、ややワイドな角度からでも枠を捉えて、GKの反応を破れる。ボックス内でラストパスを受けた時の危険性は外国人FWにも負けず劣らず。すでにJ1でも二桁を狙える能力が備わっていると見られるが、本人の意向次第では直接海外に挑戦しても面白い。いわゆるターゲットマンではないが、もう少し周りを使うタスクをこなしながら、ゴールを狙えるようになる必要はあるかもしれない。 大卒2年目にしてリーグ戦16得点とブレイクした山田は持ち前の攻撃センスに加えて、メンタリティーも海外の環境で個を伸ばしていけるポテンシャルはある。175センチとサイズは大きくないが、狭いところでもボールを受けることができ、ペナ幅でこそ決め切る能力を発揮できるだけに、ウイングよりは2トップやシャドーなど、インサイドで起用してもらえる環境を見出していきたいところ。どんどんフィニッシュに磨きをかける姿勢は買いたいが、海外はもちろん日本代表のリストに入っていきたければ、動き出しや守備の継続性はもっと伸ばしてほしい。 坂本一彩(ガンバ大阪)は“ザ・ストライカー”という表現が似合うタイプで、ワンチャンスでゴールを仕留めるシュートの決定力を備えながら、単騎のドリブル突破など、個人でそのシチュエーションに持ち込むこともできる。大枠としては古橋亨梧に通じるが、チャンスメイクをしながら大事なところでボックス内にいるという意味では、南野拓実にも少し重なる。ファジアーノ岡山での武者修行を経て、G大阪でようやく主力に定着してきた段階であり、天皇杯で準優勝に終わったあと、チームを引っ張る存在になっていきたいと語っておりまだ国内で伸ばせる余地はあるが、どういう道筋を描いていくか興味深い。 年齢的に高めではあるが今シーズンJ1で得点力を開花させたジャーメイン良(ジュビロ磐田)も良いオファーさえあれば、スピードと決定力を海外でも発揮できるだろう。また日本人選手に限定せずに評価すれば、Jリーグはもちろん韓国代表で高さとパワフルなフィニッシュワークを見せるオ・セフン(FC町田ゼルビア)も、欧州のトップリーグで勝負できるポテンシャルは十分に備わっている。 [著者プロフィール] 河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。
河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji