ケルンに戻されていたトヨタ7号車/全体ベストは“4秒落ち”/沈黙のシュワルツマンetc.【WECオースティン金曜Topics】
8月30日、アメリカ・テキサス州オースティンに位置するサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で、WEC世界耐久選手権第6戦『ローンスター・ル・マン』のレースウイークの走行が始まった。初日はFP1、FP2という2セッションが行われ、フェラーリ499Pが最速タイムを記録している。 【写真】万全の『暑さ対策』を施しコース下見を行うトヨタのニック・デ・フリース 走行初日を終えた金曜のCOTAのパドックから、各種トピックスをお届けする。 ■コルベット好走の“伏線” COTA走行初日の最速タイムは、FP2でアントニオ・ジョビナッツィが51号車フェラーリ499Pで記録した1分52秒468だった。COTAでの直近の開催である2020年2月のイベントでは、グスタボ・メネゼスがLMP1のレベリオンR13・ギブソンで1分48秒404という金曜日のベストタイムを記録していた。 一方、ダニエル・ジュンカデラは82号車シボレー・コルベットZ06 GT3.RでLMGT3の最速タイム、2分05秒630をマークした。 ジュンカデラは、今年初めにDXDTチームとともにGTワールドチャレンジ・アメリカでZ06 GT3.RがCOTAのレースを経験したことが、チームに勢いを与えたと感じている。 「このイベントは、ここでの過去のイベントのデータを活用できる最初のレースだ。少し有利なスタートを切れると思う」とジュンカデラは語った。 ■トラブルの種となったバンプは解消 ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのマネージングディレクター、ジョナサン・ディウグイドは、7月のCOTAでのテスト中に、ターン1のバンプがポルシェ963に軽微なブレーキの問題を引き起こしたことを明らかにした。 その後、いくつかのコーナーが再舗装され、いくつかのバンプセクションが解消された。 ディウグイドはSportscar365に「ターン1で大きなバンプがあったため、のちにフロントブレーキのロックやブレーキの問題が発生したと思うが、テストを終えた時点では全体的に満足していた。トラックの更新は、すべて我々にとってプラスになると思う」と語っている。 ■路面の進化幅は大きい? ハート・オブ・レーシングチームのドライバー、アレックス・リベラスは、週末を通してサーキットの新しく再舗装されたエリアにラバーが載っていくため、トラックの進化が「ゲームチェンジャー」になると考えている。 「トラックが進化することが今週末の大きな課題のひとつだろう」とリベラス。 「つまり、金曜日には本当に良いクルマだったとしても、日曜日にはそれほど良くないという可能性もあるということだ」 ■ハーツ・チーム・JOTAにタイトル確定の可能性 ハーツ・チーム・JOTAは、今週末のCOTAで、今年の『FIAハイパーカー・チーム・ワールドカップ』の首位を確定させる可能性がある。 カラム・アイロット/ノルマン・ナト/ウィル・スティーブンスがシェアする12号車ポルシェ963が優勝すれば、プロトン・コンペティションの99号車ポルシェとAFコルセの83号車のフェラーリ499Pのどちらかが2位に入賞しない限り、タイトル獲得には充分となる。 AFコルセのドライバー、ロバート・シュワルツマンは、JOTAとの戦いにタオルを投げる準備はできていないと語る。 「もちろん、追いつきたい」と、彼はSportscar365に語った。「まだ少し遠くにいるが、残り3戦では何だって起こりうる。どうなるかは分からないよ」。 なおシュワルツマンは、メディアがプレマ・レーシングからのNTTインディカー・シリーズへの参戦を強く示唆する中、2025年の計画について尋ねられた際、答えることはなかった。 「どんな選択肢があるのか、将来がどうなるか、今年の終わりには分かるだろう」と彼は語った。 「最近でも(オランダグランプリで)F1のフリープラクティスセッションに参加する機会があったが、それは良い経験だった。どうなるか見てみよう」 ■大量リードにも油断なし ポルシェ911 GT3 Rを走らせるマンタイ・ピュアレクシングはLMGT3のランキングで25ポイントの優位に立っている。それにもかかわらず、クラウス・バハラーは残りのレースでの同チームの順位について警戒を怠らない。 「僕らは、状況がどれだけ早く変わってしまうかを目の当たりにしてきた」とバハラーはSportscar365に語った。 「一番良い例はル・マン24時間レースだ。僕らは17時間リードしていたが、問題が発生し、かろうじて2ポイントが取れただけだった。もちろんギャップはつけているけど、懸命に努力し、集中力を維持し、運も必要だ。最終的には(タイトル争いに)勝つチャンスがあることを願っている」 ■テストでシャシーにダメージ トヨタGAZOO Racing・ヨーロッパ(TGR-E)のテクニカルディレクター、デビッド・フルーリーは、チームの7号車GR010ハイブリッドが7月のCOTAでのハイパーカーテストでスピンし、ターン4、5、6でピラミッド型の縁石にぶつかったことにより、シャシーにダメージを受けたことを明らかにした。 この車両はチームの本拠地であるドイツのケルンに飛行機で運ばれ、新しいタブが取り付けられた後、今週末のレースのためにオースティンへと送り返された。 フルーリーは、スピンの責任者が8号車のクルーの一員であること以外を明かさなかった。トヨタは7月のテストでは、一度に1台ずつを走らせることを選択していたという。 なお、7号車のマイク・コンウェイは今週末、トヨタのドライバーとして10周年を迎えている。彼は2014年、アレクサンダー・ブルツ、ステファン・サラザンとともに、中嶋一貴の代役としてCOTAでレースデビューを果たした。 ■プジョーの2025年ラインアップ プジョー・スポールのテクニカルディレクター、オリビエ・ジャンソニーは、現在のリザーブドライバーであるマルテ・ヤコブセンが2025年にレースシートに昇格することについて、同ブランドは「自信と興奮」を抱いていると語った。 「彼は準備ができていると思う」とジャンソニーは語った。 「彼は非常にやる気があり、一生懸命働いてる。クルマに乗って(テストで)かなりの時間を過ごし、シミュレーターでも我々とたくさん一緒に作業しており、その点でも非常に優れている。彼は車両とシステムを非常によく知っている」 ジャンソニはまた、プジョーは来シーズンの新しいリザーブドライバーを決めなければならないと語り、ステランティス・モータースポーツのジュニアドライバー、ニコ・ピノが候補に挙がっているという。 「ステランティスとの選択肢はある」とジャンソニー。「フォーミュラEとWECでの取り組みの間に相乗効果を生み出そうとしている。だが、まだ(決定する)段階ではない」。 ジャンソニーは、2025年のプジョーのドライバーラインアップにこれ以上の変更はなさそうだと明言した。ただし、ドライバー陣の入れ替えがあるかどうかについては、「まだ判断するのは早すぎる。入れ替えることもできるし、単に(ヤコブセンをニコ・)ミューラーと入れ替えることもできる。すべてはオープンだ」と付け加えている。 ■ポルシェとアストンの2025年の状況 ポルシェのLMDhファクトリー・ディレクターのウルス・クラトルによれば、プロトン・コンペティションが2台体制に拡大する可能性などカスタマー・チームとの協議が続く中、来年のWECのグリッドに何台のポルシェ963が登場するかは、まだ決まっていないと述べた。 「カスタマーと話し合っているが、まだ何も決まっていない。これは、大きな市場ではない。このようなものをオペレートし、すべてのコストを負担できる、またはそうしたい人は多くは存在していない」とクラトルは語っている。 ハート・オブ・レーシングのボス、イアン・ジェームスは、チームが2025年に向けて2台体制のハイパーカー・プログラムに向けた準備を進めるなか、アストンマーティン・ヴァルキリーLMHがテストで6,000kmの壁を破ったことを明らかにした。 「他のメーカーが先行しているため、我々には登るべき山があるんだ」とジェームス。 「現在ハイパーカーが走っているトラックではテストしていないので、ペースに関してはまったく分からないが、内部での目標は達成している」 [オートスポーツweb 2024年08月31日]