浜風を制する者がタイトルを制する…阪神“怪物新人”佐藤輝明が甲子園アーチスト条件をクリア?!
バース氏は1985年に54本、1986年に47本をマークしてタイトルを獲得したが、1985年は54本中、センター、レフトへの本塁打が半分にあたる27本。1986年には、さらにその傾向が強くなり、47本中、実に32本がセンター、レフトの逆方向。レフトスタンドに放り込んだのは24本だった。 甲子園を本拠地とする左打者が本塁打を量産するためにクリアすべき条件を佐藤は満たしていると言っていい。 ただ、その打撃技術は、“ライバル”江川卓氏が投じた渾身のストレートを逆方向に運んだ掛布氏や、日本シリーズで工藤公康(現西武監督)のカーブを逆方向へ運んだバース氏のそれとは若干違う。 逆方向に本塁打を打つ極意を掛布氏から何度か聞いたことがあるが「逆方向の打球は流すのではなく、ヘッドを外から内側に包みこむように使い、ボールを逆方向に引っ張るイメージで打っていた」という。バース氏は「体の左側にしっかりとためてボールを運ぶイメージ」で、逆方向へホーランを量産した。 元千葉ロッテの評論家、里崎智也氏は、佐藤が逆方向へ打てる理由をこう分析する。 「佐藤の特長は、どのボールに対してもフォームを崩さずにフルスイングしていること。いわゆる自分の形を持っている選手ですね。このスタイルの打者の典型は、西武のおかわり君こと、中村剛也選手。どのコース、どの球種に対しても同じ形でフルスイングしてくる。パワーがあるのでタイミングがあったときは、逆方向にも打球が飛ぶ」 佐藤はアッパースイングだが、体はレベルに回るので、ちょうどボールの下にバットが入って強烈なスピンがかかる。この日、2回の第1打席では、高々と上がった打球を広島の矢野がファウルグラウンドで待ち構えながらも大きく風に流されて捕球できず内野安打にしてしまう珍しいシーンがあった。これも打球に強烈なスピンがかかっていたため不規則な動きをしたもの。どんなボールに対してもフォームを崩さずにフルスイングすることで、打球が弾けて爆発するかのようにセンターから逆方向に飛ぶのである。 ちなみに里崎氏が「フォームが崩れない打者」の典型として重ねた“おかわり君“は、通算424本塁打。高卒4年目に22本塁打、7年目に46本塁打を放ち本塁打王を獲得している。 里崎氏は、「新人は計算ができない。20本、30本打つ可能性は十分にあるが、あくまでも現段階では可能性」と慎重だが、「逆方向に打てるのであれば20本以上は打てる」の声が専門家の中から多く出ている。 過去の新人選手の最多本塁打は1959年の大洋の桑田武氏、1986年の西武の清原和博氏の31本、次いで長嶋茂雄氏の29本となる。阪神での新人最多本塁打記録は、田淵幸一氏の22本で、次いで岡田彰布氏の18本。新人の20本以上は2002年に横浜の村田修一(現巨人コーチ)氏が25本をマークして以来出ていない。