ワインディレクター田邉公一が注目、上映時間4時間のドキュメンタリー『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』の見どころとは?
ーーでは、あらためてワインについてのお話を伺っていければと思います。映画内でも巨大なワインセラーが写っていましたが、トロワグロには常時3万5千本のワインが用意されているそうです! この本数のワインを管理するには、どんな能力が求められますか?
この規模になると「カヴィスト」と呼ばれる、ワインセラーの管理やワインの受発注を専門で行うスタッフがいてもおかしくないですね。ゲストがワインリストから注文したワインをセラーに取りに行き、ヴィンテージを間違えずに、適正なタイミングでテーブルにお出しする。ましてや、営業中のレストランでは料理を提供しながら、目まぐるしく変わる状況の中でそれらの作業をしなければならない......その緊張感はかなりのものですね。 私もホテルのソムリエとして働いていた時は、常時3000~4000本ほどのワインを取り扱っていたことがあります。たとえばロマネ・コンティやドン・ペリニヨンなどの高価格帯の商品があるワインセラーは、その鍵を管理できるスタッフを制限していたりなど、責任に応じてアクセスできるワインの幅が増えていくようなシステムを取り入れていることもありました。
ーーミッシェル・トロワグロとチーフソムリエがDRCやルロワ(注・どちらもブルゴーニュを代表する、超高級ワインの生産者たち)の値段についてコメントしているシーンが印象的でした。
シェフとソムリエの方が一対一でしっかりと話し合われているのが素晴らしいと思いました。ソムリエの方がゲストの要望や在庫を把握し、リストとの兼ね合いを考え、シェフに即答できているのはさすがでした。あと、金額の高騰は日本だけじゃないんだなと(笑)。ルロワさんとの直接の繋がりがある点もすごいなと思いました。
ーーワインと食の関係について、この映画を見てあらためて感じられたことはありますか?
飲と食は密接に繋がっていて、「食べる」時に欠かせないのが「飲む」こと。それらは組み合わせにより感じ方は無限に広がり、その繋がりを大切に意識することが、人生の楽しみを広げることになると実感しています。
ーー田邉さんにとって、ワイン、そして食とは何か、お聞かせください。
ワインというのは「世界」を繋いでくれるもの、これは人と人というのももちろんですが、あらゆる事象の世界を繋いでくれて、食と結びつき、命と楽しみを広げてくれます。食とワインの楽しみを知らないのは、一度の人生において、とてももったいないことだと思います。 そういう意味で、ワイン、食とは、まさに人生そのものであると考えています。 『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』 監督・制作・編集/フレデリック・ワイズマン 出演/ミッシェル・トロワグロ、セザール・トロワグロ、レオ・トロワグロ、マリー=ピエール・トロワグロほかレストランスタッフ 2023年、フランス映画、240分 配給・宣伝/セテラインターナショナル https://www.shifuku-troisgros.com ©2023 3 Star LLC. All rights reserved. 8月23日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開