ラグビー日本代表 世界ランク10位の実態とその意味するもの
ラグビー日本代表が国際ラグビーボード(IRB)発表の世界ランキングで過去最高の10位に浮上した。「歴史上初めてのこと。素直に嬉しい」。報せを聞いてひとまず喜んだのは田中史朗。この国初のスーパーラグビー(南半球最高峰リーグ)プレーヤーとなった日本代表のスクラムハーフだ。ニュージーランドのハイランダーズ、日本のパナソニック、ナショナルチームを行き来する29歳である。 2003年に制度が導入された世界ランキングは、国同士の真剣勝負であるテストマッチの結果を受けて変動する。ただ、上位国の顔ぶれはほぼ固定化されていた。ラグビー界では、強豪国は強豪国同士で試合を組みがちだ。その傾向は改善されつつあるとはいえ、「ティア2(世界の勢力分布図における2番手)」の国にとって、順位向上を狙える上位国との対戦は、実現自体が難しいとされてきた。そもそも競技の特性上、番狂わせが起こりづらい。元日本代表監督の向井昭吾氏(現コカ・コーラGM)も実感を込めてこう言うほどだ。 「無差別級の格闘技だから。当たるのが強いチームが勝つんですよ」。 そんななか昨今のジャパンは、エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)の指導のもと上昇ムードに包まれている。14位だった昨秋からテストマッチ(国同士の真剣勝負)では目下10連勝中。特に今春のツアーでは、環太平洋の雄であるサモア代表、欧州6強同士リーグ戦「シックス・ネーションズ」で揉まれるイタリア代表を、いずれも東京は秩父宮ラグビー場で下していた。 東アジアにルーツを持つ「ティア2」のジャパンのトップ10入り。それは世界に驚きを与えるニュースで、日本人の主観論でいえば、「ジャパンの進化の証」とも捉えられそうではあった。しかし、そうした見立てに田中は賛同しない。身長166センチ、体重72キロ。本人の実感としては足も遅くパスも上手ではない。それでも、身体能力で超ド級の大男たちとひりひりする勝負を繰り返してきた。