インフレ鈍化でも…ハリス氏に不満募らせる女性有権者【WBSクロス】
特集WBSクロスです。今回のテーマは「離れる女性票?」です。11月5日のアメリカの大統領選挙まで2カ月を切りました。勢いづく民主党のハリス副大統領は、共和党のトランプ前大統領を支持率でリードする状況が続いています。ハリス氏の支持率上昇には女性の有権者の支えが大きいとされていますが、今、ハリス氏に不満を募らせる人たちもいます。現場を取材しました。 「私はすべてのアメリカ人のための大統領となることを約束する。私を信頼してほしい」(ハリス氏) ハリス氏は先月開かれた民主党大会の後も勢いを維持しています。支持率では共和党のトランプ氏に1.8ポイントの差をつけ、リードを拡大。その原動力の一つとなっているのが、女性有権者の支持です。 「トランプ氏は人工妊娠中絶の自由を制限するだろう。トランプ氏らはなぜ女性を信頼しないのか。われわれは女性を信頼する」(ハリス氏) ハリス氏は全米を回り、自ら耳にした体外受精の不妊治療の打ち切りや、望まぬ妊娠といった問題に対し、女性の権利を守る姿勢を強く打ち出しています。 こうした態度に共感するのが女性有権者です。ある世論調査では、女性有権者のうち51%がハリス氏を支持すると回答。トランプ氏の38%を13ポイント上回り、支持者の間ではアメリカ史上初の女性大統領の誕生に期待感も高まっています。
ハリス経済政策は大丈夫か?
しかし先週末、首都ワシントンで開催された共和党を支持する女性有権者を集めた集会は、トランプ氏の姿はなかったものの、大きな盛り上がりを見せていました。 集会に参加したバネッサ・ファウラさん。もともとは民主党を支持する家庭に育ったと言いますが、11月の選挙でトランプ氏に投票することを決めました。 「食料品を買って、以前より20~30%も多く支払わなければならないのは、経済がいかに悪いかを思い出させる。バイデン政権はアメリカ人家族の安心感を奪った」(ファウラさん) このところ、インフレは落ち着く傾向が見られるものの、物価は高止まりしているアメリカ。経済政策のかじ取りで厳しい評価を受けていたバイデン大統領への不満は今、政権の一員であるハリス氏に向けられています。 アメリカの各種世論調査でも、経済や雇用政策の支持率はトランプ氏がハリス氏を上回る結果となっています。 「バイデン氏とハリス氏の政策はわれわれの経済を破壊した。私はトランプ氏が自らの政策を実行し、アメリカを今よりいい国にしてくれると信じている」(ファウラさん) 有権者のインフレへの不満が残る中、ハリス氏も手をこまねいているわけではありません。中間層の支援に向け、食料品価格のつり上げの禁止や、初めて住宅を購入する人への頭金の支援など新たな経済政策を打ち出しました。 しかし、IMF(国際通貨基金)の元高官で、経済に詳しいデズモンド・ラックマン氏は「ハリス氏の経済政策は生煮えで現実的ではない。この政策には1兆7000億ドル(約245兆円)の費用がかかる見通しだ。その金をどこから調達するのか」と疑問を呈します。 ラックマン氏はハリス氏が仮に大統領に就任し、この政策の実現に踏み切った場合には、ある問題が生じると指摘します。 「インフレ・ドル危機・財政赤字の問題を抱えることになる。経済学者の間ではこの政策に疑念が生じている」(ラックマン氏) ハリス氏は経済政策の発表以来、各地の遊説などで政策の財源など詳細について多くを語らない戦略をとっています。 「ハリス氏は、自らが経済は得意分野ではないことを理解していると思う。彼女は選挙戦では自由や中絶について語り、別の方向に進めたいと思っている。多くのことを約束し、選挙後は有権者がそれを覚えていないことを期待している」(ラックマン氏) 大統領選までおよそ2カ月。有権者はどのような選択をするのでしょうか。 ※ワールドビジネスサテライト