「死んだ方がマシ」とベランダに出て行く妻…境界性人格障害の妻との離婚、訪れた壮絶な「修羅場」
筆者は家族のためのADRセンターという民間の調停機関を運営している。そこには、日々夫婦問題の相談が持ち込まれるが、おそらく社会からはそれほど認知されていないと思われる問題を抱えている人もいる。 【マンガ】夫の死後、5200万円を相続した家族が青ざめた…税務署からのお知らせ そのひとつが、気性の激しい妻をもつ男性からの悲痛な相談である。今日はそんな事例を紹介したい(「あるある」を詰め込んだ架空の事例である。)相談にやってきたAさんは、穏やかそうな雰囲気で物腰も柔らかい。イケメンで身なりもこぎれいだ。事前のヒアリングシートによると、自分で事業を営んでいるとのことであった。そんなAさんだが、気性が荒すぎる妻との結婚生活に限界を感じているという。 その夫婦生活の実態については、記事前編「激怒して包丁やハサミを持ち出す…気性が荒すぎる妻、夫が明かした『衝撃の夫婦生活』」から。
徐々に明かされていく精神状態
続いて、再度Aさんに登場してもらい、境界性人格障害を妻に持つ夫の心の動きを見ていきたい。 Aさんは、妻に服を破られた、5時間説教された、死んでやると包丁を持ち出されたといったとんでもないエピソードを「大したことじゃないんですけど」という体で話をした。一見するとあまり悲壮感が伝わってこない。 しかし、話が進んでいくと、徐々に心情の吐露が始まった。妻からのメールを見るだけで動悸がする、妻の機嫌を損ねないように息をひそめて生活している、帰宅恐怖症で深夜の街を徘徊している、時々自分も死にたいと思ってしまうといった深刻な話が出てくるのだ。 上述のとおり、境界性人格障害の妻に魅力を感じ結婚する男性は、その男性自身も力を持っていることが多い。そのため、多少揺さぶられたり痛めつけられたりしても、もち堪えられてしまうのだ。それに、「男性である自分が妻にひどい目に遭わされているなんて、そんなはずはない」とか「男なのに恥ずかしい」といった気持ちがあり、他人に相談もできない。
仕事にも支障が……
そんな状況から一歩進んで専門家に相談しようと思うのはどのような理由なのだろうか。Aさんは次のように語った。 「夜眠れなくなって、仕事にも支障が出てきました。このままではまずいと思って心療内科を受診したところ、あなたの妻は境界性人格障害かもしれませんねと言われました。それで色々調べて……。でも、治療は難しいみたいだし、そもそも妻が病院に行くとは思えないし。 子どもを置いていくのは忍びないのですが、妻の攻撃対象は夫である僕で、子どもには攻撃しません。それに、このまま僕が働けなくなれば、全員が路頭に迷うことになる。それだけは避けなければと思い、離婚を決意しました」