一回に先制3ランを放ち、ピースサインを繰り出す村上。掲げた2本の指と折り曲げた3本の指で青木の背番号23を示した（撮影・福島範和）

惜別のアーチだ！！　ヤクルトは13日、巨人23回戦（神宮）に7－2で快勝。球界野手最年長の青木宣親外野手（42）が現役引退を表明した〝特別な日〟に、感謝の白星を届けた。自主トレで弟子入りする村上宗隆内野手（24）が一回に先制の26号3ランをマークした。試合前に行われた引退会見にともにサプライズで登場した山田哲人内野手（32）も2安打1打点。ミスタースワローズの思いを託された2人が輝きを放った。 【写真6枚】引退会見で山田哲人から花束を受け取るヤクルト・青木宣親。村上宗隆からもらい泣きも 進むべき道を示してくれた大先輩へ送る感謝のアーチを描いた。一回1死一、二塁で、燕の4番を担う村上がバックスクリーン右へ先制の26号3ランを放った。師も愛した温かな大歓声が沸く神宮。柵越えを確信してゆっくりと走り出すと、右手でピースサインを掲げた。突き立てた2本の指と折り曲げた3本の指で、青木の背番号23を示していた。 「今日は特別な日。何とか勝ちたいという思いで、先取点を取れてよかった。（青木と自主トレをともにする）山野さんと僕でお立ち台に上がれて、そこがよかった」 惜別の一発だった。この日の試合前。青木の引退会見が開かれた。村上にとって青木は、1年目を終えた2018年オフから自主トレで弟子入りする師匠。会見の終盤に花束を手にサプライズで登場すると、感謝の思いがあふれ出た。人目をはばかることなく、目頭を押さえて号泣。とめどなく頬を伝う涙をぬぐいながら、言葉を紡いだ。 「たくさん迷惑をかけましたけど、今こうしていい野球人生、いい人生を歩めているのは、ノリさんに出会ったおかげ。本当に感謝しています」 心に刻まれた〝青木の教え〟がある。「とにかく、行き切れ」。結果を残し続けることが容易ではないプロの世界。「その最初の第一歩目を大事にしよう」と伝えられ、スタートを大切にする。教えを体現するように、この日は一回の第1打席に快音を響かせた。3打点を挙げ、打点を71に伸ばし、岡本和（巨人）を抜きリーグトップに。本塁打と2冠に躍り出た。 教わったのは、野球に対する姿勢や技術だけではない。「僕がまだ若くて、ミスや人間として駄目なことをしてしまったときには、面と向かって叱ってくださった。僕の道を正すというか、愛を持って接してくれました」。一緒に過ごした7年間。人間としての成長も後押ししてもらった。

4番として、チームの顔として、強い覚悟を抱く。「スワローズとしては（野手で）最年長のノリさんがいなくなった。そこの自覚はもちろん持たないといけない。一つでも多く勝って、笑顔でハイタッチできるシーンが増えれば」。〝青木魂〟を継承し、チームを先導する。（武田千怜）