沈没事故で辞意 韓国の総理はどんな役割? /辺真一「コリア・レポート」編集長
韓国の鄭●(=火へんに共)原総理が旅客船セウォル号沈没事故の責任をとり、辞意を表明しました。事態収拾のため大統領ではなく、No.2の総理(首相)が首を差し出す形となりました。
日本と違い「国会議員」を条件とせず
大統領制の韓国では総理は大統領を補佐する立場にあります。同じ大統領制の米国では大統領に万一のことがあれば、副大統領が大統領の職務を代行しますが、副大統領のポストを設けてない韓国では総理が大統領職を代行します。 韓国では大統領は5年に一度、国民の直接選挙で選ばれますが、総理は大統領が任命し、国会の同意を得て、就任します。従って、大統領の場合は、違法行為で弾劾されない限り、国会から不信任を突き付けられ、解任されることなく、5年の任期を全うできますが、総理や閣僚に限っては国会が大統領に解任を要求することができます。 議院内閣制の日本では、総理は国会議員でなければなりませんが、韓国の場合、国会議員の資格を必要としません。韓国の歴代総理の多くは、学者、弁護士、裁判官、官僚、退役軍人から選出されています。政治手腕や行政能力を買われてのものでなく、世論受けや、地域バランスの重視、あるいは国会対策という観点から選出されるケースもあります。
限られた権限「大統領の手足」
絶対的な権限を与えられている大統領制の韓国にあって総理の権限、役割は極めて限られています。例えば、日本は総理が大臣を任命し、組閣しますが、韓国の総理には長官と呼ばれる大臣の任命権はありません。大統領が長官を選出し、組閣します。総理は行政に関する大統領の指示を受け、それが執行されるよう行政各部を総括する行政の長、言わば大統領の手足に過ぎません。 また、韓国は米国同様に大統領補佐官制を敷いていますので、経済、外交、軍事など重要案件は各大統領補佐官がフォローし、大統領に進言するようになっています。従って、政策樹立への関与や裁量権も狭まれています。
中国の総理よりも弱い権限
中国の場合、周恩来から始まり前任の温家宝、現在の李克強に至るまで歴代総理はNo.2としての権力を行使していますが、韓国の総理は序列ではNo.2の地位にあっても中国の総理ほどの絶大な権力も持ち合わせていません。裁量権や権限のなさにおいては金正恩独裁体制下の北朝鮮の総理と大差がないかもしれません。