AIは温暖化対策の切り札になれないのか?「データセンターの電力消費量激増」というパラドックス、結局は原発頼み
■ 「政府は原子力発電を奨励すべきだ」41% しかし20年以降、太陽光発電と風力発電の支持率は2桁減ったのに対し、原発支持率は13ポイントも増えた。「政府は原子力発電を奨励すべきだ」41%という意見が「奨励すべきではない」22%を上回った。政府はどちらにも影響力を行使すべきではないとの回答は36%だった。 筆者は米原子力エネルギー協会(NEI)のジョン・コテック上級副会長に「AIのデータセンター、暗号通貨のマイニング(採掘)、電気自動車(EV)、気候変動対策による電力需要の増加に原子力発電は対応できるか」と尋ねてみた。 コテック氏はこう答えた。「米国のようにエネルギー資源が豊富な国では風力発電や太陽光発電、エネルギー貯蔵の導入が進む。原子力エネルギーは信頼性が高く、二酸化炭素を排出しない大量の電力を必要とする大手ハイテク企業は特別な関心を持っている」 「多くの原子力を電力システムに統合することはハイテク企業からの増大する需要を満たすために重要になってくる。より広範な経済にとっても重要だ。私たちはSMRやその他の先進的な原子炉に多くの関心を持っている」
■ ビル・ゲイツのテラパワーは345メガワットの原子炉 「例えばビル・ゲイツのテラパワーは345メガワットの原子炉だ。アマゾンが投資したSMRは4基で計320メガワット。1~2年前には現在のような電力需要の大幅な伸びは予想されていなかったので、AP1000のような大型加圧水型原子炉の話も増えている」とコテック氏は話した。 米国は原子力発電容量を3倍にするため、既存の約100ギガワットに加え、200ギガワットの発電容量を追加することを目指す。先進的なSMRのほか既存原発の運転延長、スリーマイル島原発のように廃炉の再稼働に取り組む。SMRの開発と配備を加速させるカギは規制緩和だ。 しかし過去10年で、新たに加わった原子炉はわずか3基。同じ期間に停止した原子炉の数は3倍以上の10基だ。コストが高く先行投資が必要であること、放射能廃棄物の処理が大変であること、市民の容認や政治的支持がさまざまであることなど、多くの課題が残されている。 【木村正人(きむら まさと)】 在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
木村 正人